『エンドリング – エクスティンクション イズ フォーエバー』 レビュー | 言葉無き命の輪っか
ADVゲーム『エンドリング- エクスティンクション イズ フォーエバー(ENDLING – Extinction is Forever)』をクリアしたのでその感想をば。
ストーリーのネタバレは避けてます。
ジャンル | キツネアドベンチャーゲーム |
対応プラットフォーム | ・PC(ダウンロード) ・Nintendo Switch™(パッケージ・ダウンロード) ・Xbox One™(ダウンロード) ・PlayStation®4(ダウンロード) |
日本語実装 | 字幕あり |
価格 | 3,960円(Nintendo Switch版) |
開発 | Herobeat Studios |
パブリッシャー | THQ Nordic、HandyGames |
本作をプレイするにあたり THQ Nordic Japan株式会社よりNintendo Switch版をご提供いただいております。
🦊どんなゲーム?
環境破壊により絶滅寸前となったキツネを操作するアドベンチャーゲーム。子ギツネの兄弟達を引き連れ、過酷な世界でのサバイバルを経ていく中で物語が展開されます。
その設定だけで儚げな雰囲気は感じ取ってもらえるかと。アクション要素は控えめでナラティブ要素の強い作風です。
🦊ゲームプレイの流れ
キツネ親子には巣穴が用意されており、そこを起点に夜の世界の探索に出かけます。
探索の舞台は人の手によって荒廃した過酷な環境。キツネにとって多くの危険が待ち構えており、銃を向けてくる人間や至る所に仕掛けられた罠、子ギツネを狙う他の動物といった脅威から身を守りつつ、命を繋ぐため食料を探します。
本作では立体的なフィールドを横スクロールで移動する2.5Dアクションが採用されてます。どこへ向かい、どんな食料を探すかはプレイヤーの自由。基本的にノンリニアなプレイを楽しめます。いつでもマップ画面を開けるので道に迷うことはあまりないでしょう。探索を重ねていくと次第にエリアが拡張され巣穴が増えていきます。
食料探しには獣ならではの嗅覚を活用。「においボタン」を押すことで一定時間、食料への道筋が可視化されます。食料の確保の際は獲物に逃げられないよう気配を消して忍び寄ったり、木登りしたりと、適切な行動が求められます。
食料ゲージは子ギツネ全員分が共有されており、ゲージがゼロになるとランダムで1匹死亡してしまいます。
マップ内の特定のポイントに到達すると、3匹の子ギツネはそれぞれスキルを習得します。それらを駆使することで食料の確保が容易になったり危険を回避しやすくなります。
日数を重ねることでストーリーが進行していきます。といってもプレイヤーが出来事を現場状況から推測する非対話的アプローチが採用されてるため、様々な解釈が可能です。「こんなことがあったんだろうな」と動物目線で推測してみるのも本作ならではの楽しみ方でしょう。
夜明け前になったら巣穴に戻り、明日を迎えます。ちなみに夜が明けると活発になった人間が道を遮り、帰還が困難になってしまうので時間配分は計画的に。
🦊クリア感想
エンディング見ました。いやぁ…涙腺が緩い方はティッシュを手元に置いておいた方がいいかもしれませんね。
操作はシンプルかつスムーズで、プレイ時間は5時間程度。難しい要素は何一つ無いのでとっつきやすい作品です。テーマ性に惹かれた方はもちろん、ブレイクタイムにもおすすめな作品です。ノンリニアに遊べるので作業っぽさを感じなかったのも良かった点。
難易度は高くありませんがゲームオーバーは何度も体験しました。サバイバルに必要なのは計画性と慎重さですね。ちょっと無茶したりすると帰還が困難になるケースが多々ありました。その日の行動範囲を決め、ルートを決め、アクシデントにどう対処するか。それってサバイバルの持つ面白さの一つと言えます。動物目線でそれを楽しめるのはとてもユニークな体験でした。
情緒を掻き立てるサウンドトラックがこれまた素晴らしい仕事をしてます。ここぞというシーンで盛り上げてくれます。
ゲーム中は好きなタイミングでセーブができず、巣穴に戻ったときにだけオートセーブされます。命は1つだけ、ということでしょう。食料を得られなかったり、外敵に襲われて子ギツネちゃんがプレイ中に亡くなってもゲームはそのまま続行されます(最後の1匹が亡くなってしまうとゲームオーバー)。こだわりが感じられる”命は1つだけ”の仕様が私はお気に入りです。
最初から最後までプレイを通して、生き物が持つ本能的な力強さのようなものをひしひしと感じました。プレイ時間のほとんどを費やす”食料探し”というシンプルな目標。母ギツネがボロボロになりながらも毎日こなすルーチンですが、このゲームにおいてそれは決して単なるアイテム探しではなく、純然たる生命活動の一環なんですね。
寝ること、夜間に活動すること、危険を避けること、スキルを学ぶこと、計画を立てること、全ての行動が食料を探すことに結びついてます。それは帰結する形ではなく、輪っかとして成り立ってます。プレイした方はゲーム内の毎日を繰り返す中で強く感じ取れるんじゃないでしょうか。1日1日の行動もそうですが、この作品の大テーマである”子を産み、育む”のももちろん輪っかの一部です。
プレイしてて嫌でも見せつけられてしまうのは、その輪っかに楔を穿つのは他でもない我々人間であるということ。実際に人類、とくに近代はそうやって多くの生態系を破壊し、多くの動植物を絶滅させてきました。その延長線上の1ページがエンドリングなのでしょう。
言葉無き動物の世界だからこそ見たり聴いたりできるものがあって、本当に味わい深い作品でした。プレイを通していろんな景色を見ていき、クリアしたら今一度、副題「Extinction is Forever 」の持つ意味を考えてみましょう。