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祝正式リリース!ありんこストラテジー『Empires of the Undergrowth』1.0正式版レビュー

  
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祝正式リリース!ありんこストラテジー『Empires of the Un...

およそ7年に及ぶ早期アクセスが終了し6月8日に正式リリースを迎えたRTS「Empires of the Undergrowth(エンパイア・オブ・ジ・アンダーグロウス)」をプレイしてみた!

本作をプレイするにあたりHooded Horse様よりSteamキーを御提供いただいております

Empires of the Undergrowthの概要

リアルタイムストラテジーゲームに落としこまれたミクロなアリの世界で、広大な巣の建設と複雑な群れの管理を通して自分だけの帝国を作り上げよう。虫たちの世界でユニークな敵や繁栄のチャンスを探しまわりながら、多種多様な種の兵隊アリを激しい戦闘に赴かせ、働きアリたちに指示を出して、ずっと拡張してゆける基地の建設・管理を行おう。そして何があろうと、女王アリだけは守り抜こう。

Steamストアページより引用
ジャンルリアルタイム・ストラテジー
プラットフォームPC
日本語対応字幕あり
価格3,980円(Steam)
開発Slug Disco
パブリッシャーHooded Horse, Slug Disco

1.0正式版に含まれるコンテンツ

  • 「飼育ケース」ストーリーモードの最終章:フルボイスと新たなアートワークで贈る三部構成の新しいドキュメンタリー型ミッション、クライマックスを迎える飼育ケースチャンレンジ、完成したシングルプレイ用ストーリーモード
  • プレイアブルなマタベレアリや、オオキノコシロアリなどをすべてのカスタムゲームモードに追加
  • シングルプレイ用ストーリーモードやカスタムゲーム、そしてバトルアリーナモードに登場するいくつもの新種の生物たち
  • 「ニューゲーム+」モードの追加され、ストーリーモードをより高い難易度やさらなるアップグレードを利用して遊ぶことが可能に
  • その他さまざまなQoL調整や改善(詳細に関するパッチノートは1.0配信時に公開予定)
1.0ローンチトレーラー

🐜ミクロな世界の過酷な生存競争!アリってすげえ!
(ネタバレ無し)

プレイ時間約20時間

ありんこって身近にいるにもかかわらず小さな存在すぎるせいか普段あまり注目することもないんですが、捕食者であり被食者でもある二面性や役割が明確な社会構造を持つ点などストラテジーゲームと相性抜群な題材じゃん!とプレイしてて感心しました。アリとその周囲から成り立つ生態系をRTSとして表現するコンセプトはばっちり成功してると思います。

どんなゲーム?

本作はコロニー作り・リソース集め・ユニット生産・戦闘の4つの行動を通して様々な目標をクリアする明快なRTSですが、いずれもアリが主役ならではのユニークなものになってます。

まずステージが土中と地上の二層構造。土中では不動の女王アリを中心に巣作りを行い、同時に多くの生物たちによる生態系が敷かれてる地上では外敵との攻防や食料調達を行います。女王アリは卵を産む群れの母体であり死守すべき生命線でもあります。

土を掘り進めた先で敵が出てくるのか餌が出てくるのか(結果的に敵も餌だが)。そんな戦場の霧ならぬ戦場の土とも言えるドキドキ要素がいい刺激になってる

ユニットは主に働きアリ兵隊アリの2種に分類。土中では働きアリによる拠点運営がメインとなり、プレイヤーは土の掘削と施設の配置、その後のアップグレードなどを指示します。指示したら働きアリが全て自動で作業開始。具体的には土を掘り進めて作ったスペースにリソースを保管する食料庫やユニットを生産する育児室といった施設を配置していきながら巣のネットワークを徐々に広げていく形です。

施設のアップグレードには条件がある。ハニカム構造の配置が効果的

兵隊アリがメインとなる地上も同様にユニットの移動先を指示さえすれば食糧調達と戦闘が自動で行われます。倒した生物をそのまま食料として持ち帰るのが基本ですが一部のアリ種はその限りではありません。例えばハキリアリを操作する場合、持ち帰った葉っぱで菌を栽培、それが食料になりますし、ヤマアリはアブラムシの尻から出る蜜が食料になります。生態が異なれば戦術も異なるわけで、アブラムシの蜜を安定供給するにはアブラムシを外敵から守ってあげなくてなりません。そのような関係性を相利共生といいますがリソースの獲得方法一つとってもそういう自然界の多様性を垣間見れるってのが本作の良いところ。教養の資質も備えた作品です。

同じアリ同士でもマタベレアリはシロアリをエサとする。全滅させぬよう生ず殺さずの塩梅をキープする必要がある

戦闘もなかなかアツく、アリなので数の暴力で他を圧倒するという基本戦法は共通ですが近距離・遠距離・タンク・ヒーラーなど多種多様なアリが登場します。これゲーム化のために与えられたファンタジー能力ではなく本当に酸を飛ばしたり仲間を治療するアリがいるんです。アリってすげーよな。敵も多種多様で例えばザトウムシはHPが減少すると脚を自切して逃げるし、葉に擬態するカマキリはミニマップに表示されません。そんな形で生物の特徴がうまくゲームに落とし込まれてます。

勝利条件は殲滅や一定時間の生存など様々

難易度とゲームモードについて

コロニー作りと戦闘を同時に行なうRTSって操作忙しそう…と思いがちですが並みのRTSより操作量は少なめ。前述の通り基本は移動先の指示が大半で、機能面を見ても優先行動の選択やグループ分けといった指揮を執る上での最低限の機能が押さえられてる程度です。管理面でもマイクロマネジメントの類は無く、アップグレードや生産に要るリソースも食料のみ。操作・情報量がシンプルなためゲームに慣れるのに時間はかからないでしょう。

前半のペースはゆっくりめ。だいたい1ゲーム30分~1時間くらい

一方、ユニットの特徴など覚えるべき知識がそこそこあります。加えて時間経過で環境が変化するミッションが少なくないため素早い対応を求められるケースも。その2つの課題をクリアした上で先手を打ったり計画的なリソース配分を考えておかないと難易度ハード以上への挑戦は厳しい印象を受けました。ノーマルなら後手後手でもなんとかって感じ。けれどもストーリーモードを一通り体験すれば知識を段階的に学べるし、何より物語が色んな意味で面白いものになってるのでぜひとも最後までのプレイをお薦めします(クレイジー!)。また諸々の設定をイジってプレイできるモードも用意されてるため間口の広さを有してる点もお伝えしておきたいところです。どんなゲームモードが用意されてるかは以下の通り。

  • 【チュートリアル】ゲームの基礎を実践で学べる独立したモード
  • 【ストーリー】キャンペーンモード。クリア後は引き継ぎ・拡張ありの周回要素が追加
  • 【ゲームのカスタマイズ】対戦形式のスカーミッシュとルールから登場生物の有無まで細かに調整可能なフリープレイの2つのモードが遊べる
  • 【アーケード】選択した生物同士の決闘を観戦するバトルアリーナ、様々な固定シナリオが用意されたエキストラステージ、デモ版でプレイ可能だった特別仕様のデモ版ステージの3つのモードが遊べる

ストーリーモードについて

ストーリーモードを中心にプレイしたので触れておきます。ストーリーモードの内容は本編とも言えるストーリーミッションと、独立したシナリオで様々なアリ種の生態を学べるサイドミッションの2種に分類。サイドミッションでユニットの特徴やゲームルールを学び、ストーリーミッションでそれらの経験を集約させる。そのような流れを交互に行なう形式で物語が進行していきます。

ストーリーミッションは人工的なサバイバルが待ってるよ

ストーリーミッションの舞台はとある研究室の飼育ケースの中。そこではサイドミッションのクリアで得た報酬を使い巣作りやユニット強化を行います。飼育ケースはストーリー全体を通して拡張していくメインベースといったところで、その地表では研究者によるマッドな実験が行われます。

ストーリーミッションで使うユニットはアビリティの習得、能力値の強化が可能

予想だにしない方向へ進んでいく物語や自由な編成を行える点などストーリーミッションには独自の魅力があるのですが、私はそれ以上にサイドミッションが好き。飼育ケースとは打って変わりサイドミッションで描かれる自然界の1ページを切り取ったかのようなシナリオは、まるで実際に生態系の一部を観察しているよう。生物の活動時間に関わる昼夜のサイクルや地形変化と行動制限をもたらす動的な環境など、生態系を織りなすいくつもの要素が再現されてるのがサイドミッションの魅力です。

相手は虫だけじゃない

生態系の複雑さが増すストーリー後半になってくるとストラテジーゲームらしく戦争の様相が色濃くなります。理由は環境の変化や外敵の襲来など様々。例えば生息域周辺の水位が高くなれば餌場と住処は水底に沈み、難民と化した群れ同士による安全地帯の奪い合いが始まります。場合によっては捕食者が巣を荒らしながら土中を進撃してくることも。

そんな過酷な生存競争を勝ち抜くにはアリの頭数を支える食料の供給と備蓄が課題。そのための鍵となる巣作り、補給線、生産ペースなどロジスティクス面全てが軍団の継戦能力に収束すると言っても過言ではありません。プレイを重ねて徐々にそれらの運用術を掴んでいく、そういう面白さがストーリーモードにはあります。

ロジスティクスの権化、それがアリ

👍ベストポイント

魅力的に感じた部分や好きな点は上で挙げてますが、面白さを引き立てているものとして土中の存在は大きいと思います。大枠で見るとお馴染みの仕組みに沿ったRTSでありつつも、そこに巣作りという本作ならではの基地建設要素が組み合わさることでRTSから”ありんこストラテジー”へと昇華されてます。

もう一点挙げるとやはりビジュアルのインパクトの大きさ。アリ視点での自然界が描かれているのはもちろん、大量のアリから成る大群と大群のぶつかり合いを観察できるのは本作ならではの醍醐味でしょう。

それとUI関連を書くの忘れてましたが見やすく良好です。そもそも操作・情報量が多くないというのもありますが。とくにグループの整理がメイン画面下部で簡潔に行えるのがいいですね。アリを指揮するのであれば群れの管理のしやすさは重要だよなと。またステージ固有のメカニクスや敵との初遭遇時には詳細な情報とその対策が提示されるのも好印象。と言っても初見で全て把握しきるのは難しいかもしれません。

最後に。数は多くないであろうアリの大群を指揮できちゃうRTSってだけでも価値ある作品ですが、その内容は驚くほど虫の世界が作り込まれてるし彼らの生存戦略をゲームとして楽しめたのは素晴らしい体験でした。本作が長い間「非常に好評」を得ているのは伊達じゃない。虫ゲーの一つの到達点を見たような気がします。

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