あつまれ どうぶつの国『Chicken Police』クリア感想(ネタバレなし)

アドベンチャーゲーム『Chicken Police』をクリアしたので感想をば。

 

どんなゲーム?

獣人による獣人のための世界を舞台としたポイント&クリックタイプのADVゲーム。

作品全体を取り巻くのは4、50年代を代表する映画表現”フィルム・ノワール”。作品テーマもノワールらしく、刑事コンビがとある事件と対峙する内容となっている。

開発は業界のベテラン勢が在籍する独立系スタジオ The Wild Gentleman。今作が処女作となる。
パブリッシングはTHQ Nordic傘下のHandyGamesが担当。

配信プラットフォームはSteam、GOG.com、PlayStation 4、 Nintendo Switch、 Xbox One。
英語によるフルボイス、日本語字幕に対応。

クリア感想

個性的なビジュアル、スリリングなストーリー、本格的な推理、と多くの魅力が詰まった本作。

いつもどおり作品を構成する要素に触れていきます。

🐱強烈なビジュアル

なんと言ってもまずはこの作品のキャラクタービジュアルに触れざるを得ない。

実写の人体モデルの頭に乗っかってるのは実写の動物たち。
何で乗っけようと思った(笑)

主役コンビは雄鶏だし、犬猫などベーシックな動物の他、げっ歯類、爬虫類なども登場し、もはや”リアルぶつ◯”の様相となっている。

そんな強烈なインパクトを放つキャラクター達だが、決してビジュアル頼りの出オチ作品ではない。
それは次の項で説明しよう。

🐶作り込まれた世界観

登場人物が獣人という設定はビジュアルだけではなく、しっかりとその世界観の隅々にまで浸透している。獣人であるがゆえの世界が根っこの部分から構築されているのだ。

そんな獣人世界の作り込みたるや凄まじく、そこまで練るの!?と思わず唸ってしまうほど。(動物だけに)

  • 政治、戦争、宗教、歴史、差別、流行、国外の情勢などの社会的背景
  • 各登場人物の生い立ち、性格、遍歴、家族構成などのパーソナルな背景

これらが緻密に設計されているからこそ、メインプロットからキャラ同士の何気ない会話、推理の材料、小道具まで全てのものの裏付けが成立しており、彼らのアニマルライフが至って整合性の取れた自然なものとして描かれている。

ここまでは裏側の部分とも言える要素についてだが、表の部分である劇中の語句やセリフ回しの細部にもきっちり獣の血が通っている。

例えば通常、「人生」とする言葉を鶏である主人公の場合「鳥生」と表現していたりする。

つまりアニマルであるがゆえの非常にユニークな会話を楽しめるのだ。しかも最後までブレることなく。
その点において私が感動したのは、このユニークさを日本語で表現しきった日本語訳の質の高さ。それもまったく違和感のない文章で、ダブルミーニングですらお手のものといった印象だった。脱帽!

加えて、ムード作りに無くてはならないジャジーな楽曲群も見逃せない。ノワール演出の柱としての効果を存分に発揮している。

これらの一端はデモ版でも垣間見れるので気になる方はぜひプレイしてみて。

 

🐔ユーモラスな会話

プレイ中の殆どの時間を会話を読むことに費やすわけだが、登場人物全員もれなく個性的で、なおかつジョークの応酬が凄まじく、皮肉たっぷりのハイセンスでユーモラスな会話は読んでて飽きない。

それをいぶし銀に調理してくれている声優の演技力がとにかく素晴らしい。とくに主人公サニーの激シブ感にやられた。
虚無感、哀愁を背中に漂わせつつ燻らす加齢臭が目に染みるのなんの。ノワールを地で行く存在だ。こいつが鶏だという事実が受け入れられないw

🐴本格的推理

事件を捜査する上で、関係者への聞き込み、容疑者への尋問、現場の調査、得られたヒントの整理は欠かせない。
それらはプレイヤーが介入できる形で用意されており、プレイヤー側にも推理に参加してもらおうとする作り手の姿勢が伺える。

特筆すべきは尋問パート。
対象者の性格を踏まえた上で、核心をついた答えに辿り着けるよう誘導するというシステムになっており、スリリングな駆け引きが楽しめる。
この作品の醍醐味とも言えるパートだ。

 

🐯ストーリー

ノワールもの、と聞くとなんだか退屈そうな印象をお持ちの方もいるかもしれないが、主人公サニーの相棒であるマーティの存在がそれをいい意味で裏切ってくれている。

それに加え、ストーリーの過程で出くわす思わぬピンチや捜査パートがいい刺激になっており最後まで退屈することなく楽しくプレイできた。

物語は点と点が線で結ばれていく後半から加速していき、一気にエンディングまで駆け抜けていく。
個人的にはもうちょい中盤から後半にかけて引き伸ばしても良かったんじゃないかな、といった印象を受けた。そう感じたのもチキンポリスの活躍をもっと見たい!という私の気持ちの現われからだろう。

銃撃戦も発生

ちなみに、できるだけサブ要素を収集していって1周クリアにかかったプレイ時間は10時間程度だった。

難易度については、ヒントがさり気なく配置されているケースが多く、観察力と多少の勘の良さが必要になってくるが、難しいという印象はとくにない。

余談になるが、クリア後のスタッフロール終了後、あるヒントが与えられる。
これはまだ私自身確認したわけではないので推測になってしまうが、そのヒントを2周目に活かすことにより、1周目とはまた違う展開が見られるような気がする。
正直なところ1周終えた時点ではどうも腑に落ちない部分があり、ひょっとしたらこの作品、トゥルーエンドが存在するのかもしれない。

🐮不満点

少々気になった点も挙げておこう。

それは任意のタイミングで手動セーブができないところ。
進行状況は常にオートセーブ。ストーリーが進んでしまうタイミングが良くも悪くも事前予測しにくいので、やり残したことがあったと気づいた頃にはもうオートセーブされてしまっており、後戻りできなくなっていたことが何度かあった。

まとめ

ざっとまとめると…

  • 個性的なビジュアルとノワール調の演出はユニークな体験をもたらす。
  • 作り込まれた設定は緻密で整合性の取れたアニマルワールドを描き出している。
  • 日本語訳・声優・音楽 素晴らしい。
  • プレイヤーによる推理はこの作品の醍醐味である。
  • サニーとマーティのコンビ芸は退屈を吹き飛ばす。
  • 手動でセーブできない点が不満。

総じてかなりよくできたアドベンチャーゲーム。だんだんと獣人世界に魅了されていく自分がいました。
謎を推理していくってやっぱワクワクできて楽しいよね。

登場人物や作中の小道具には元ネタが用意されており、それを探してみるのも面白いかも。往年のノワール映画は元より意外な日本アニメからの引用もあったりして、幅広い作品からの影響が見て取れる。
(某ハードボイルド小説の私立探偵とか某宇宙賞金稼ぎとか…)

そんな先人たちへの賛辞が散りばめられた『Chicken Police』、面白いADV / ビジュアルノベルを探しているのであればぜひプレイしてみてください。
「ケッコー」おすすめ!