SFアドベンチャー「State of Mind」クリア感想 (ネタバレなし)

近未来を舞台としたSFアドベンチャー「State of Mind」をクリアしたので感想をば。ネタバレはありません。

概要

開発・販売はDaedalic Entertainment。ローポリゴンで描かれた人物、環境が特徴的なアドベンチャーゲームです。プレイヤーは主人公リチャード・ノーランを中心に複数のキャラクターを操作し物語を進めていきます。ボイスは英語、ドイツ語のみですが、字幕は日本語対応しています。マウス・キーボード、コントローラー、Steam実績、GOG Galaxy実績に対応。

世界観説明

まずは世界観の説明。舞台は2048年のベルリン。世界は南北アメリカとヨーロッパ・アフリカの一部が属する西側連合とそれ以外から構成される東側に二分されており、主人公リチャードが住まうベルリンは西側に属しています。作中では国名が一切出てこずベルリン、ニューヨークシティなど都市名のみで説明がされています。おそらく現代とは違う国境線が引かれていることを暗に示しているものだと思われます。ベルリンではある組織によるテロが相次いでおり治安は芳しくない様子。人々の暮らしはまさにSFモノのそれで、雑務はAIロボットが担当、個人端末でのホログラムによるコミュニケーション、スマート家電システム、自動運転、機械肢、VR、冷凍睡眠などの現代の最先端テクロノジーがすでに生活の一部と化しているともに、行動に関しては統制下に置かれており市民一人ひとりがID管理されドローンや警察ロボットが街中をスキャンして監視しているといったディストピアな面も見られます。西側政府が許可したものしか利用できず、東側に関するあらゆる物に触れることは違法となっています。また、ホームレスが多く見られ貧富の差が大きいことがうかがえます。

主人公リチャード・ノーランはベルリンのメディア企業で働くジャーナリスト。家族は妻トレイシーと一人息子ジェームス。リチャードが車の事故で負傷したことをきっかけに物語は始まります。そしてある陰謀に直面することになります。

クリア後の感想

正直な事を書いちゃうと、惜しい。とにかく惜しい。つまらなかったわけではないし、致命的な間違いを犯しているというわけでもない。でも、面白かった要素は何かあったかなと考えてみたときに、気になった部分の方を多く思い出してしまいます。

キャラを動かしづらい

多分プレイした方はみんなこの不満を持つはずです。このゲームはキャラクターを動かし、オブジェを調べて物語を進行させていくのですが、独特な慣性が働くので進行方向を曲げるとき思い通りには動かせません。これが地味にストレスが溜まります。さすがに段々慣れてきますが(笑) 一番大きな不満点です。

ストーリーほぼ一本道

一本道構成が悪いわけではありません。ですが選択肢がいろいろ出てくるわりにどの選択肢を選んでも進行に差があまり見られません。それは最初から最後まで、です。エリア移動時やイベント開始前にオートセーブされるしチャプター毎にセ-ブデータが保存されるので、選択肢による展開の違いは後で確認しやすくはなっていますが、ほぼ1本道のためリプレイ性は低め。

ローポリは成功?

いまどき珍しいバーチャファイター並みのローポリグラフィック。もちろん敢えて採用したのでしょうけど、私にはこれが成功していたとは思えませんでした。たしかに2018年の今となっては逆に新鮮味があるその見た目は興味を引き、話題性という点では成功していると思いますし、洗練さを感じられ汚いグラフィックというわけでは決してありません。オリジナリティを出すことにも一役買っています。ですが、ゲームや映画に限らず、重厚なドラマではセリフ以外にも人物の表情で心情を語るという演出が大きな役割を果たします。State of Mindでもローポリキャラが表情で語るシーンが何度も出てきますが、どうしても萎えます、あの顔では(笑) ローポリなので表情も読み取りづらいですし。何より感情移入がしづらく感じました。

肝心のストーリーは悪くない

いろいろとよくない部分を書き連ねてしまいましたが、アドベンチャーゲームはストーリー展開の良し悪しが肝心。State of Mindは人物の背景、世界観、生活様式などの設定がよく練られ、ストーリーは謎が謎を呼ぶ波乱に満ちた内容となっており、飽きが来るということはありませんでしたし、大筋の流れはとてもいい味が出ていました。よく練られた世界観を活かしきれていない感が正直あり、演出面ではリアルさよりファンタジーっぽさが目立つのが個人的にいまいちでしたが。私は隅々まで探索したつもりだったんですが、それでもクリア時間は10時間ちょっとで、できればもう少しストーリーがボリューミーかつ後半がもっと丁寧に描かれていれば一層よかったと思いました。行動パートとイベントシーンの比重のバランスがとても良かったので、おそらくそこを重視した結果かもしれません。

まとめ

道中のパズル要素を含むギミックは難しいものはとくになく、セーブ&ロードを繰り返すことはないのでテンポはとても良いです。ですが、ストーリーを進行させるメカニックが単調な点と、作りこまれた世界観があまり前面に出てこない点(言い換えると登場人物の周辺だけにフォーカスされてしまっている)が、もったいなく感じられました。でも全体的にいい味が出ていて、よくまとまっている作品だと思います。私の環境ではフレームレートの低下やバグのようなものはとくに見受けられませんでしたし、日本語翻訳もごく一部違和感はありましたがよく出来ています。地味にストレス溜まるキャラ移動だけは不満を抱きますが。

ボリュームに対して価格が若干高めに感じますが、舞台が30年後の近未来ということで、そのような舞台設定やテクノロジーに興味がある方に向いている作品だと思います。ブレイクタイムにドラマを楽しみたいってときの1本にもいいかも。

「State of Mind」のGOG.comストアページはこちらからHumbleストアでもDRMフリー版を取り扱っています。