絶望の家路!シベリア鉄道RTS『Last Train Home』リリース直前レビュー

目指せウラジオストク!シベリア鉄道9,000kmの旅は壮絶なサバイバルだった!

本作をプレイするにあたりTHQ Nordic Japan株式会社様よりレビュー用Steamキーを御提供いただいております。

【11月30日更新】価格の追記、動画の差し替え、一部内容の修正を行いました。

「Last Train Home」の概要

ジャンルリアルタイム・ストラテジー
対応プラットフォームPC
日本語対応の有無字幕あり
価格5,170円
開発Ashborne Games
パブリッシャーTHQ Nordic
戦場を支配せよ:

ミッションはリアルタイムで展開される。部隊を展開し、さまざまな目標を達成していこう。巧みな戦闘技術、計画、そして優れた戦術が君を勝利へ導くだろう。

兵士の成長:

新たなスキルをアンロックし、より良い装備を手に入れることで、兵士たちをより強くなっていく。彼らの秘められた物語を解き明かし、勲章を授与し、昇進させよう。

乗員の管理:

列車の中では兵士たちに戦闘以外のこともさせる必要がある。アイテムを作り、負傷者を治療し、士気を回復させ、祖国への長く苦しい旅路を乗り切ろう。

列車の強化:

車両や機関車をアップグレードし、運行上重要な整備作業を監督して、装甲列車のポテンシャルを最大限に発揮させよう。

シベリア横断の旅:

シベリアの広大な雪原にも内戦の戦禍は及んでいる。物資を備蓄し、取り引きを行い、新たな同盟者を獲得し、苦難につぐ苦難を乗り越えよう

史実にもとづく物語:

第一次世界大戦において連合国軍の一員として勇敢に戦ったチェコスロバキア軍団が体験した史実にもとづく「The Last Train Home」のストーリーは、圧倒的な説得力をもってプレイヤーに訴えかけてくる。

公式サイトより引用

ゲーム内容を3分にわたって解説する公式トレーラー

多数の要素が絡む過酷な鉄道サバイバルをレビュー

プレイ時間35時間

本題に入る前に「Last Train Home」の舞台背景について。本作は史実がモデルとされており、第一次世界大戦末期のロシアが舞台。オーストリアからチェコスロバキア共和国が独立したことで、ロシア軍として参戦してたチェコスロバキア軍団は新たな祖国へ帰還する運びとなります。しかし西方へ向かうルートは独立反対派による抵抗があるため、シベリア鉄道で東方へ横断し、ウラジオストク港から船でヨーロッパへ向かうという地球一周ルートが採用されました。本作でプレイヤーが指揮を執る部隊はその最後の一団となります。

ゲーム内でも詳しく語られます

というわけで「Last Train Home」は故郷への帰還を目指すチェコスロバキア軍団の長く険しい道のりを描くRTSです。シベリア鉄道を装甲列車で突き進むその道のりには以下のような困難が待ち受けてます。

  • ロシア内戦による不安定な情勢
  • 食料や燃料の不足
  • 極寒の地
  • 様々な個性を持つ人員の管理

本作のユニークなところは軍団の拠点が列車だということ。物資の調達の際は部隊を下車させ、局面によっては歩兵戦を行います。その道中ではメインクエストの他にサイドクエストが発生することも。常に上記のような おそロシアもとい過酷な環境の中、軍団の存続を図りながら列車をひたすら走らせるのがゲームの主な流れとなります。このレビューはゲーム内容を大まかに運営パートと戦闘パートの2つに分け、各々の要素にフォーカスしていきます。

運営パート

シベリア鉄道とその周辺地域が描かれたマップ内の移動がメイン。その合間に列車とそこで働くユニットの管理、そして必要に応じて資源回収もしくは歩兵戦に向けた部隊編成・派遣を行います。その内容をざっくりと紹介。

車両のアップグレードと編成

鉄や木材などを消費して各車両の耐久性、防寒性、積載上限などをアップグレードできる。また車両基地では様々な役割を持つ車両の編成が可能。医務車や工作車を増結すれば運営内容の拡充を図れる

働き手の配置

機関士や医師などの働き手を団員から選抜。働き手に備わってるスタミナと特性、昼夜のシフトを加味して作業の効率化を図る。怪我や過労に陥ってるユニットは回復するまで働かせられない。

走行速度と脅威度

ゲーム進行速度とは別に列車速度を停止・通常・急行から変更可能。また列車が長時間その場に居座り続けると脅威度が増し敵対勢力から攻撃される危険性が高まる。脅威度を急減させたいときや時間制限付きの任務に間に合わせたいときは急行が求められるが燃料消費が大きくなる。

部隊の派遣

沿線の周辺地域には森やショップなどの資源が得られる地点や戦闘を行う地点が点在。そこへ部隊を派遣することでクエストが発生する。派遣先との距離は消費スタミナや列車待機時間に影響し、部隊員数は寒冷地で持たせる防寒具の数などに影響する。

ストラテジーゲームの運営パートとくればプレイヤーができること、把握すべきことは当然多いわけで、本作もその通りなんですすが、上記の様々なシーンにおいて細やかな配慮がされてるのでとても快適に策を実行に移せます。例えばユニット単位で食事量を調整できますし、現在の燃料であと何日持つかといった情報がポップアップで容易にアクセスできます。他にも遊び方を確認できる心強いガイドや舞台背景を知れる百科事典が用意されてるのでより理解が深められます。

UIについては情報量多めですがアイコンやカラーを使ってなるべく簡潔に網羅されてます。アイコンの意味を理解するには少し時間がかかるかもしれませんが、慣れると非常に把握しやすいです。上記で挙げた細やかな配慮や視認しやすいUIのおかげで非常にプレイしやすい運営パートになってますね。過酷な旅路ですが司令官の椅子の座り心地は最高です。

ユニットの管理画面。現在の状態が全て確認できる

忘れてはならないのがあくまで主役となるのは軍団を形成する一人一人のユニット達。軍団運営は彼らのマネジメントを中心に回すことになります。戦闘時の装備や非戦闘時の働き方はもちろん、レベルアップ時のステ振り、室温管理、怪我の治療や休養など多岐に渡ります。

旅を続ける上で最大の懸念事項と言えるのがユニットの体調管理でしょう。彼らの健康状態は列車の稼働効率に大いに影響します。労働や派遣などユニットのあらゆる行動にはスタミナの消費が伴い、それが過ぎると任務配置不可となる過労状態になってしまうのです。労働時の昼夜シフトから戦闘の部隊編成まで、ユニットを配置するときは常に彼らの体調と相談することになります。

また戦闘のみならずイベント時の選択や気温低下の結果、怪我したり士気が低下するケースも。怪我はバッドステータスに、士気の低下は脱走に繋がります。本作は個々の士気から軍団全体の士気を算出しており、それが低下することで最悪ゲームオーバーになってしまいます(オプションで変更可能)。幸いなことにそれらの回復手段は一つではなく複数用意されてます。酒場で宴会すれば皆の士気も上がりますよ(二日酔いの危険も…)。

極寒地域は湖も凍るから超やばいよ

ユニットを管理する上で体調の他にも大きな判断材料となるものがあります。それは各々に備わってる特性や信念。本当の人間のように個性が設定されてるんです。はっきりと長所と短所に分かれるものもあれば時と場合に応じて効果が変わるものもあり、その種類は豊富です。少しだけ例を挙げます。

  • 巨体 – 戦闘中のカバーの効果が低下
  • 大食い – 食事量が増加
  • 傲慢 – 一人の時の作業効率アップ、複数人の時はダウン
  • ハンター – 森や湖で得られる資源にボーナスが付く 
  • 愛国主義者 – 会話やイベント時に影響。士気の増減に関わる

これが実に多種多様で戦闘・非戦闘問わず様々なシーンで発揮されます。最初はこんなに種類があるのかと面喰らいましたが、それらと上手く付き合うことが生存戦略の鍵だと気付きました。彼らの個性は恩恵であり制限でもあります。その不安定な材料を不安定なシチュエーションとどうやって調和させて歩を進めるか、それを考えるのが本作のマネジメントの面白さです。

不器用で虚弱体質なヨセフ。どう運用する?

不安定なシチュエーションと書きましたがこれは何が起きるかわからない旅路そのものを指します。派遣先で必ずしも資源を得られるとは限らず、もしかすると怪我して帰ってくるかもしれません。線路にめっちゃ邪魔なモノが置かれてたり、食料をネズミに食われてしまう日もあるかもしれません。そんなことは日常茶飯事で、出くわした脱走兵の処遇でモメたり、団員を置き去りにしなければならない辛い事件が起きるかもしれません。どれだけ用意周到に、どれだけ適材適所な運用を心がけてたとしても、それを挫きに来るのがシベリアの怖いところ。だからこそピンチを乗り越えたときの安堵感はたまらないものがあります。波乱に満ちた旅路は喜びと絶望をプレイヤーにもたらします。

鉄道の進路を選択する重大な局面。運命の分かれ道…

クエストについても少々。本作は章仕立てで構成されており各章にメインクエストが設けられてます。それとは別に道中いくつものサイドクエストが発生するわけですが、それらへの干渉は自由です。こだわりが感じられるのは、クエストに成功しようが失敗しようがゲームが続くということ。メインクエストが失敗したとしても続きます。軍団が瓦解するまでその歩みは止まりません。そのこだわりはゲーム進行データの保守が一つだけという仕様からも見られます。ニューゲームした場合、それまでプレイしてた旅の記録が全て消えるんです。試したら本当に消えちゃったよ…。「突き進むしかない一方通行の旅だからこそ全ての決断に後戻りはない」という強烈なメッセージを感じました。
ロードはいくつか遡れます。

戦闘パート

戦闘クエストの地に部隊を派遣することで戦闘パートへ移ります。感触はオーソドックスなミリタリーRTSです。指定したユニットのグループ分け、遮蔽物を使ったカバー、茂みでのステルス、旗のキャプチャ等、基本を押さえたつくりになってるため慣れてる方はすんなり馴染めるでしょう。ただし軍団の生命線とも言える物資管理の観点から、なるべく弾薬や医療品といった消耗品は節約したいところ。加えて団員の健康状態は戦闘後にも響くため、自ずと消耗を抑える形、つまりステルスが戦闘の主体となります。実際ステージの動線はそのようにデザインされてますし、敵部隊の穴を突いて少しずつ牙城を崩すやり方は非常に有効です。

アンブッシュや十字砲火を意識するとイイ感じ

一方で敵軍とバチバチにやり合う「動」のシーンも。ミッションの中には陣地の防衛や時間制限のあるもの、人物の護衛など様々用意されてるためです。さらに登場する兵器の中には固定銃座や装甲車・戦車など派手に暴れられるものも存在。ステルスが主体と書きましたが、ミッション達成の手段はプレイヤー次第です。目標達成に向けてあれこれ策を巡らすのが好きな方は楽しめるでしょう。

装甲車で蹂躙するのは楽しいぜ!

戦闘の主役であるユニットについて。運営パートにも共通して言えることですが、彼らは就いてるロールの経験を積むことでレベルアップします。そしてRPGのように各能力値にポイントを振り、新たに取得したスキルを最大4つまでセットできます。移動速度重視の電光石火タイプにもできますし、近接攻撃力を上げて銃剣突撃を得意にするのもいいかもしれません。さらにレベルとは別に階級が昇進することで選択可能なロールを増やせます(戦闘・非戦闘問わず)。ユニットの成長は部隊の選択肢を増やすことに繋がり、それ即ち戦闘における自由度が増すということです。幅のある部隊編成と戦術を絡められる点が本作の戦闘を濃いものにしてくれてます。

武器は高ティアなほど性能が良い。三八式も出てくるよ

一方で戦闘中厄介だったのがユニットのスタック現象。これ頻発してて悩まされました。リリース時のビルドで改善されてるといいですが。

難易度の調整

その他の見逃せない要素としてはプレイスタイルをイジれる難易度変更システムがあります。今回私がレビューするにあたり選択した難易度は「コマンダー」という本来のプレイを楽しみたいプレイヤーに向けたプリセットです。他にも管理を緩和して戦闘に特化させるものや、資源に余裕を持たせるプリセットがあります。さらに難易度の構成要素のパラメータを調節し細かく設定することも可能。被ダメージやイベントの過酷さ、自動一時停止のタイミングなど隅々までテコ入れでき、柔軟な調整が可能になってます。運営パートの項で記した細やかな配慮がここからも確認できますね。

プレイ中でも変更できるよ

感想

実際に体験したわけではないので推測するしかありませんが、チェコスロバキア軍団の旅の壮絶さや内戦に巻き込まれた人々の苦労など、時代の空気をひしひしと感じられました。それはゲームプレイからもそうですし避けようがない状況に追い込まれていくストーリーからもです。本作は登場人物に母国語を喋らせることで没入感を高める手法がとられてますが、それが見事に効いてます(母国語ボイスは変更可能)。

あまり見かけない題材に多くの要素を詰め込んだ作品ですが、破綻することなくうまくまとまってるのが凄いなと。そのプレイスルーはおそらく本作でしか体験できないものではないでしょうか。RTSの戦闘も運営のマネジメントも非常に完成度が高く、それらが一体となることで得られる面白さは傑作の域にあると感じてます。隅々にまで行き届いた配慮のおかげでとっつきやすく、ライトな遊び方ができるのも好印象でした。早く旅の続きをプレイしたいところです。今年の冬は厳しい寒さになりそう⛄