レトロスタイルFPS「Project Warlock」クリア感想

GOG.comでの時限独占タイトルとしてリリースされたFPS「Project Warlock」の難易度イージー1周目クリア時点での感想をば。

作品概要

Buckshot Studioなるインディースタジオ開発のFPS。中心人物はJakob Ciscoさんで現在19歳だそう。Wolfenstein 3D、Doom、Duke Nukem 3D 等の90年代を代表するFPSスタイルを踏襲し、なおかつ経験値入手によるレベルアップ、パークアンロック、武器強化 等の成長要素をミックス。バリエーション豊かな5つのワールドを舞台に全60ステージが用意されており、全72種の敵、38の武器(強化後含める)、8種の呪文、12種のパークが実装されています。ワールドを構成する各ステージを突破した先に待ち構えているボスを倒し次のワールドへ進むというステージクリア型の構成となっており、合間にキャラや武器強化ができ、自動セーブが行われる”ワークショップ”へ移動します。難易度はイージー・ノーマル・ハードが用意されており、イージーは無限コンティニュー、ノーマルだと残機制、ハードでは被ダメージ量が増えパーマデスとなる。GOG.comで定価$12で販売中。(※後にSteamでも販売開始されました。)

世界観

プレイ中にストーリー描写が一切出てこないので作中のバックグラウンドが掴みにくいところではありますが、Doomのような地獄と現世が混在したかのような世界観が感じられます。砂漠や積雪地帯、工業都市や研究所のようなエリアの他に禍々しい地獄エリアも登場します。登場する敵も悪魔系・メック系など多種多様。主人公においては銃器も扱う他、魔法も扱うのでタイトルにもある通り魔法使いということになるのでしょうか。クリア後の描写ではラスボスであるサタンに変わり玉座に君臨した旨のメッセージが流れるので、地獄界の下剋上というストーリーなのかもしれませんが、そもそもストーリー性は無いに等しいのでそこらへんは「Don’t think Feel」でよかろう。

クリア感想

手堅い作りで安定した面白さ。ゆえに”ひねり”が、もうひとつあると一層よかった。

■プレイフィールは往年のFPSそのもの

この作品がレトロスタイルたらしめる要素は大きく3つに分けられると思います。まずひとつはステージ構成。ステージ内のどこかにあるキーを見つけ、ドアを開け、スイッチを押し、どこかのドアが開き、狭い通路を進み、広場で大量の敵が襲ってくるあの感じ。まさに往年のDoomのそれです。道中にはもちろん隠し扉が用意されていて、そういったシークレット要素を探すのも楽しみのひとつでした。全部は見つけられませんでしたが、中には某有名作品をモチーフにしたイースターエッグもあったりしてニヤリとさせられました。制作陣のFPS愛が垣間見えます。見つけると実績解除できるのもグッド。ステージクリア後に表示されるスコアや前述した残機制もレトロFPSっぽさを感じられます。2つ目は特徴的なピクセル調グラフィック。キャラとオブジェは平面グラフィックとなっています。レトロ感があるというよりはシャープで粒だったモダンなピクセルアートという印象。現代のFPSとしては強烈なビジュアルで、私はこのビジュアルに興味を持ち購入に至りました。グラフィックまわりのオプションは相当に充実しており、レトロ感を強調するシェーダーオプションが数種類実装されている点は見逃せません。ブラウン管っぽさを演出することもできます。今後のアップデートでさらにオプションを強化していくそうです。ゴア表現もばっちりで爽快感の向上に繋がってます。3つ目は上下の概念の薄さ。ステージの作りが非常に平面的なので戦闘も探索も平面で行われます。かつてのFPSのように視点まで上下できないわけではありませんが、上を見上げるのはせいぜい巨大な敵と戦うときくらいで、高所から撃ったり縦横無尽に飛び回るようなプレイはできませんし、当然ジャンプアクションなどありません。上空から飛来する敵も出てきません。この要素が良くも悪くもレトロっぽさを演出しているわけですが、人によっては悪いほうに出てしまう部分となり得るかもしれません。この平面縛りが次第に単調さを生む恐れがあるからです。一部エレベーター移動はありますが、どこまで行っても平面で、敵の居場所も平面なわけです。

■ハイスピードバトルとエキサイティングな演出

平面構成による単調なゲームプレイとなる恐れを指摘しましたが、私は最後までその点はさほど気になりませんでした。それはハイスピードな戦闘・探索とエキサイティングな演出が、その単調さを覆い隠しているように感じられたためだと思っています。移動速度は2段階用意されており、スプリント時はかなりの速度となり、探索時の移動に関するストレスはまずありません。そのため戦闘もテンポよくこなせます。このテンポの良さは平面縛りが良いほうに働いているとも言えます。そしてプレイ中幾度となく見舞われるドッキリ演出も単調さを払拭してくれます。スイッチを押し、隠れていた敵の大群がいきなり登場するレトロFPSお馴染みの演出のことですが、演出のメカニズムこそ単調なれど、わかっていてもハラハラするエキサイティングな戦闘はシューティングの面白さが一番味わえるシーンです。

■オブジェに引っ掛かりイライラ

プレイ中ストレス溜まった点が、ステージ内に配置されたオブジェの存在。攻撃を加えると爆破する樽や、壊すとアイテムが出現する壺など、意味ある配置がされている物は良いのですが、明らかに移動の妨げになるような配置がされている物も存在し、敵との混戦時なんかにそのような障害物に引っ掛かると地味にストレスを感じます。こちらの銃撃がそれら障害物に当たり敵への攻撃が妨げられてしまうケースも多々あり、交戦時のカバーにも使えないこれら障害物の存在意義を考えると首をかしげてしまいます。雰囲気づくり?

■成長要素で探索の楽しみと周回の楽しみが増える

レトロだけではない”成長要素”というモダンな要素も取り入れられています。道中の戦闘やアイテム取得を通じ経験値を上げてレベルアップすれば近接攻撃力、体力、魔法力、弾数上限値を強化でき、5レベル上がるごとにさまざまなパークを取得できます。またボス撃破時やシークレット発見時にはアンロックポイントを入手でき、魔法の取得と武器の強化に使えます。これら成長要素により、自分のプレイスタイルと相談しつつ強化を進める楽しみができます。また探索することがちゃんと意味ある行為となり、周回ごとに新しいプレイスタイルを模索する奥深さが感じられる点もグッドです。武器の強化、魔法の種類の組み合わせを考えると攻撃バリエーションはとても豊かなものになります。

■個人的にお気に入りの点

魔法が良い味出てます。敵を凍らせ動きを封じたり、暗所で光源を作ったり、ダメージをある程度無効化するアーマーを作ったり、多種多様です。中でも一番お世話になったのが弾を補充する魔法。この作品、お気に入りの銃だけ使ってると速攻で弾切れとなります。ですが弾補充魔法を覚えてからはその心配はあまりしなくて済みました。 ギターサウンドを主体とする楽曲も最高です。ハイテンポな戦闘と合わせてテンションが上がります。また敵の多彩さも気に入りました。ワールドの特色に合わせたデザインとなっているので飽きが来にくくなっています。あとは、まぁ、ショットガンはいくつになっても最高です。

■感想まとめ

FPSとしての基本的な部分がよくできており、レトロFPSの経験の有無に関係なくFPSファンなら楽しくプレイできるかと思います。大量の敵や巨大なボスが登場はしますが成長要素のおかげでそこまで理不尽な展開にならないのもいいですね。最後まで安定した面白さがありました。ですが、レトロ準拠を第一としたのかもしれません、全体的に薄味気味であったように感じられます。成長要素の導入はたしかに面白い試みではありますが、堅実すぎるというかとくに珍しい要素というわけでもないので、もう少しインディーならではの挑戦的な姿勢を見たかったというのが正直なところあります。ただ、往年の名作の単なる模倣品というわけではなく、しっかりとオリジナリティを感じとることができたのが購入して良かったなと思えました。この出来で12ドルならセール待ちせずとも買いです。19歳の開発者さん擁するスタジオの処女作がこの出来というのは驚きです。次回作が出るのかは不明ですが、今後には大いに期待できそうです。

「Project Warlock」GOGストア