ノスタルジックなアドベンチャー『Dordogne』レビュー
6月14日リリースの新作アドベンチャーゲーム『Dordogne(ドルドーニュ)』を一足早くプレイさせていただきました。
本作をプレイするにあたり株式会社ワーカービー様よりSteamキーを御提供いただいております。
どんなゲーム?
ジャンル | アドベンチャー |
対応プラットフォーム | PlayStation®5 / PlayStation®4、Nintendo Switch™、PC、Xbox Series X|S™ / Xbox One™ |
日本語実装 | 音声あり/字幕あり |
価格 | 1,990円(Steam) |
開発 | UN JE NE SAIS QUOI、UMANIMATION |
パブリッシャー | Focus Entertainment |
大好きだった祖母の家で体験する不思議な物語。優しく淡いタッチで描かれた風景と美しい音楽で綴られる、「あの夏」のフランス・ドルドーニュを舞台としたアドベンチャーゲームです。
公式サイトより引用
過去と現在が交錯する思い出巡り
クリアタイム | 4.5時間 |
クリアさせていただきましたが、ぐっと来るものがありますね。目頭が熱くなっちゃった…。
以下ネタバレは避けてます。まずは簡単にあらすじを紹介。
主人公はミミという名の女性。仕事や家族のことで何やら問題を抱えてる彼女は、自身が小さかった頃の記憶を何故か思い出せません。
そんなミミの元に亡くなった祖母からの手紙が届きます。ミミは祖母が暮らしてたドルドーニュの地へ向かうことに。
誰もいない祖母の家に遺された思い出の品々に触れることで、ミミは忘れていた過去を少しずつ思い出していきます。
プレイヤーはミミを操作し、様々なポイントを調べることでアイテムを入手したりイベントを発生させたりします。アドベンチャーゲームとしてはオーソドックスなつくりで、クリアまで4~5時間程度のコンパクトな作品となってます。
大人のミミを操作する現在パートと、少女のミミを操作する過去パートが交互に描かれますが、メインは過去パートです。それを踏まえてなるほどな~と思った点がありました。
実は少女ミミを取り巻く大人たちの複雑な関係性や抱えてる問題を示唆する情報がゲーム内のあちこちに散りばめられており、ストーリーで直接語られはしないもののアイテムを収集することでそういった裏情報を得ることができます。それはプレイヤーに向けられたヒントであり、幼いミミにとってそんな”大人の事情”は理解しようがありません。故に少女時代の記憶の掘り下げがなされるストーリーにおいて、そういった背景は直接投影されないんですね。
ストーリーでは多くを語らず、大人ミミが思い出した少女だった頃の無垢な記憶だけを見せる。その裏側に秘められた大人の事情の追求はプレイヤーにまかす。この二重構造によって、無垢な少女の追体験だけでないミステリーに近い要素も味わえるようになってます。
また、過去パートでは”思い出をプレイヤーの手で作る”という要素が登場。その日の出来事を通じて収拾したアイテムや抱いた感情を日記にまとめていきます。ワクワクやウキウキといった子供心を表現するのと同時に、未来のミミへの記憶の橋渡しを日記を介してプレイヤーが担う格好になります。この日記要素、こどもの独創性とエモさが感じられる素敵要素です。
本作の特徴とも言える水彩画タッチのビジュアルがとにかく目を引きます。水彩画の滲みや淡さをそのまま落とし込んだ味のあるビジュアルは、ドルドーニュの美しい風景と見事にマッチしており、全シーンでその優しく柔らかな世界を堪能できます。ドルドーニュはフランスの緑豊かな地域だそうです。きっと訪れてみたくなりますよ。
一部突っ込まざるを得ない点も。いくつかのシーンで日本語訳の様子がおかしなことになってました。セリフを追うことがメインとなる作品でこれはやや興が削がれました。
ドルドーニュの魅力は何と言っても美しい水彩画と触れあえること、そしてそんな舞台にぴったりな素敵な物語に出会えることです。コンパクトな作品だからでしょうか、いざクリアしてみると映画を1本見た感覚に近いです。その中身は誰しもが身近に感じられる等身大のヒューマンドラマ。ノスタルジックな夏休みの結末をぜひ見届けてみて下さい。
最後にこれだけは書き残しておきます。ありがとう、おばあちゃん。