地政学シミュレーター『SuperPower 3』プレイ感想
地政学シミュレーションゲーム「SuperPower 3」をプレイしてみた!
どんなゲーム?
ジャンル | グランドストラテジー、シミュレーション、リアルタイム |
対応プラットフォーム | PC |
日本語実装 | 無し |
価格 | 3,990円(Steam参考) |
開発 | GolemLabs |
パブリッシャー | THQ Nordic |
現実世界のリアルな人口動態、経済、軍事のデータをモデル化した世界で自分の国家を運営するシミュレーションゲーム。
194のプレイアブルな国家の中から1つを選び、目標無しのサンドボックスモード、現実のシチュエーションに基づいたシナリオモード、最大12人で遊べるマルチプレイヤーモードがプレイできる。
本作をプレイするにあたりTHQ Nordic Japan株式会社様よりSteamキーを御提供いただきました
プレイしてみた
地政学のシミュレーションゲームということで難解そうな気配がプンプンするぜ。地政学は先の大戦時に戦略構築の材料として発展した学問。日本においては戦後半ば封印されたが近年いろいろなところで、とくにビジネス・金融面で触れられる機会が増えてきた。私も好きで書籍を読んだりしてる。
とにかく地理や国際関係のあらゆる事柄を加味する必要がある非常に複雑なカテゴリーで、内容のアップデートが終わることは無い。地政学を定義づける境界線など今や無いようなもので、個人的には宇宙気候学も加味する必要すらあるんじゃないのと考えてるところだ。
前置きはこれくらいにして実際に着手してみよう。自由にプレイ可能なサンドボックスモードと特定のシチュエーション下でプレイするシナリオモードが用意されてる。今回は慣れるためにシナリオモードで遊んでみる。いきなりサンドボックスモードにしちゃうと迷子になっちゃうかもしれないからね。
シナリオモードには15のプリセットシナリオが用意されてる。台湾侵攻、WW3前夜、パンデミック後の再建などタイムリーなトピックもばっちり網羅。MODシナリオも適用できるようだ。
1発目はUSAと北朝鮮間の緊張関係が題材となる「The USA and North Korea」というシナリオに決めた。プレイする国家はシナリオに関わる登場国家の中から1つ選択する。今回は北朝鮮で行くことにした。北朝鮮側のシナリオ成功目標を見ると…
- 中国との同盟締結
- 穀物生産量35%増
- 肉生産量20%増
- 電力生産量20%増
- 鉱物生産量25%増
- 新型弾道潜水艦4隻配備
- 政権支持率80%以上維持
と、わりかし全方位に手を付けることになりそうなので、ゲームを学ぶにはちょうどいいと思った。
次にプレイヤー=国家指導者の容姿を決めていく。
キャラクリエイトは意外と細かく調整可能。顔の細かなディテール、肌、ヘアスタイル、服装などの外見のみならず、人種、性別、宗教、言語も設定できる。自国の民族性にそぐわないキャラにすると相応の影響が出るとのことなので、無難に朝鮮語を話すアジア人のおっさんにした。
さぁプレイスタート。地球上をぐるっと見渡せるメイン画面から様々な情報にアクセスできるようだ。まずは自らのことを知らねば何も計画を立てられない。自国のステータスを確認してみる。
※以下金額に関する単位はドル。
①人口
総人口2,400万人。出生率1.5%。移民受け入れ、国外移住の制度は無し。朝鮮語話者が91%、宗教は民族的な信仰、アジア人種が100%を占める。
②政治
与党は朝鮮労働党。政権支持率55.4%。言論の自由、集会の自由、同性愛、同性婚、中絶は違法。同盟国無し。
③経済
一次産業-30億、二次産業-190億、三次産業-30億。所得税収124億。変動費206億。固定費50億。GDP180億。赤字計192億。余財31億。
④軍事
軍事研究予算2億。軍事力グローバルランキング34位。センサー類、ステルス能力、通信、防衛のテクノロジーはいずれも5段階中最低。核とICBM保有。諜報活動予算30億。
ざっと見てみたが経済どうなってんの(;゚Д゚)
見てくれよこれ…黒字収支はシャブと武器だけという(笑)とんでもないところに赴任しちゃったな。
さてどうしよ。よく見てみると各産業の国営化、民営化の設定ができるようだ。
- 国営化は取引をプレイヤーの手でコントロールでき利益は国家に全部入る
- 民営化は取引がオートになり課税対象になる
資金の確保を優先し各部門の予算カットと軍縮に踏み切る。資金が無いと投資もままならないからね。
2年ほどかけて肉、植物、ガス、石油は黒字化。どういうわけか我が国が誇るドラッグ産業は20憶の赤字に。うーむ、ここらへんの内訳というか、何がどこへどう影響するのかといった具体的なデータを見たいな。
国家運営する上で経済面だけではないイデオロギーや法律など、一応他にも用意されてる要素があるのだが、それがどう影響するのかというプロセスがプレイヤーに全く公開されないのも気になる。脳内であれこれ夢想するのは楽しいが、プレイ中はなんだかモヤモヤした時間を過ごすことになる。
この北朝鮮シナリオは1発目としてはかなり過酷なシチュエーションだったようで、緩やかに落ち込んでいくのをなんとか食い止めようとしたが有効打が見つからず切り上げることにした。無念。
2発目はパンデミック後の回復に努めるという設定の「Penuries」をUKでプレイ。今回の成功目標は人口に見合った肉生産量の増加と燃料資源の増加、そして総輸入量15%削減となる。自給率の強化を図るのだ。
さすがUK、先進国なだけあってバカ強い体力を持ってる。さっきプレイした国とは別次元の成績だ。
成長させたいセクターに予算を充て、投資を行う。あとは様子を窺いつつ機が熟すのを待つ。
途中、選挙にも勝利しスタートから8年後に目標達成となりシナリオ初クリア。これはちょっとイージーすぎたかな。
次は戦争要素も体験してみようと思い、イランの核問題を題材としたシナリオをプレイしてみた。
戦闘中は展開してるユニットの移動先や攻撃先を選ぶくらいで、それ以上の細かな指示は出来ないようだ。重要なのは入念な準備ということか。
地理的な条件がどのように戦況に関わるか楽しみだったが、そのような要素はとくに見つけることができなかった。そのようなデータが何かしら反映された上で勝敗が決まるのかもしれないけど少なくとも可視化はされてない。ユニットが思いのほか細かく動いてくれるので戦闘の様子を観察するのはなかなか面白い。
プレイ後の所感
SuperPower 3、リリース前含め計10時間ほどプレイしたがいくつか驚いた点がある。まずチュートリアルが一切無いこと。ゲームルールへの理解が重要なジャンルだとは思うが何故…?他にも基本的な機能が欠けてる。せめてクイックセーブ&ロードとゲーム進行スピードの2、3倍速モードくらいは欲しい。この手のジャンルであれば付いてて当たり前の機能のはずだが。
今回のプレイを通して感じたこと。私は前作を未プレイなので比較はできないが、地政学のシミュレーションと銘打つにはパンチが弱いかな。リアルなモデルがプレイの裏でシミュレートされてるのかもしれないが、プレイヤーが望むままに国家運営を行うにはアクセスできる部分が少ないし、判断材料となる情報があまりにも不足してる。
とくに国際間のパワーバランス、地理の影響、各部門の動的情報、サプライチェーン、定期決算等、知りたいものが可視化されないところがきつい。地球規模のストラテジーをプレイさせる上でこれらをを隠す意図が分からない。
どこの国が右傾化した、どこの国が飢えてるといった情報がたまに出てくるものの、それがどう影響するのか不明だしイベントが起きることもまず無い。なぜプレイヤーに何も提示してくれないのだろう?
UIに関しては各セクター画面で解りやすく工夫されてる箇所がある反面、何でそこにその情報配置するの?という箇所もちらほら。スライダーがかなり動かしにくく、ショートカットキーがあまり用意されてないなど、操作性はあまり良くない。
ポートレートが正しく表示されない、ウィンドウモード時に手動入力が反映されない、ユニット一覧が表示されない、ゲーム進行のオン/オフが効かないときがあるなど、プレイの継続が困難になる不具合にも遭遇した。
SuperPower 3の内政、戦争を通じて地政学の持つ魅力がどこかに秘められてるはずだと探してみたがそれらしきものを見つけ出すことは適わなかった。ビジュアルに関しては満足してるが実プレイに関するクオリティは急ごしらえの印象が強く、もっと練る時間が必要だったんじゃなかろうか。
QOL改善、情報不足の解消、地政学モデルの可視化、これらが改良されるとグッと遊びやすくなるはず。今後のアップデートで改良されることを願いたい。