中世RTS+RPG『The Valiant』レビュー | 小規模だけどダイナミックな戦場

10月20日リリース予定の「The Valiant」をプレイしたのでレビューをば。

どんなゲーム?

ジャンルリアルタイムストラテジー
対応プラットフォームPC
日本語実装日本語字幕あり
価格5,180円(Steam参考)
開発KITE Games
パブリッシャーTHQ Nordic
公式トレーラー

「The Valiant」は13世紀のヨーロッパと中東が舞台となるリアルタイムストラテジー。

キャンペーン(1人用)、PvP(1v1~2v2)、Co-op(3人用)の3種のモードが用意されてる。

本作をレビューするにあたりTHQ Nordic Japan 株式会社様よりSteamキーを御提供いただいております。

レビュー

前述の通り、本作には3種のモードが実装されてる。だが今回はマルチプレイには触れておらず全てキャンペーンモードのプレイから得られた情報となるのでご了承を。

まずストーリーについて。13世紀のヨーロッパ・中東を舞台に聖遺物「アロンの杖」を巡る旅が描かれる。十字軍やドイツ騎士団など史実に基づいた設定が登場するが、本作の物語は史実ベースではなくあくまでもフィクションが語られる。

戦記モノとしてのスケールに関しては、壮大な国家運営や大戦争の再現に重きを置いてはおらず、主人公セオドリッヒが繰り広げる”とある男と仲間たちの旅路”という比較的小規模な枠に収まってる。この”小規模”が本作が掲げた旗印となる。

小規模スケールはRTSとしてのゲーム性にも及ぶ。本作では大軍と大軍がぶつかるマッシブなバトルは採用されておらず、とてもコンパクトな分隊ベースのバトルが楽しめる。3~8人ほどで構成された小隊が1ユニットとして扱われ、プレイヤーが操作するのはほとんどのシーンで6ユニット前後。このこじんまり感と、兵科・スキル・装備といったキャラビルド要素が相まって、操作性はRTSながらRPGライクなフレーバーを有してる。ちなみに正確に書くならばRTSではなくリアルタイム・タクティクスの方が相応しい気がするが便宜上RTSとして表記していく。

ユニットにはいわゆるパーティーメンバーであるヒーローユニットと、名無しの一般兵ユニットの2タイプが存在する。このうち経験値を貯めてレベルアップしたりスキルツリーや装備でビルドを行えるのはヒーローユニットだけ。スキルには攻撃系・防御系・特殊系の3タイプのツリーが用意されており、レベルアップにより得られるポイントを振っていくことでツリーの種類関係なく習得できる。いずれも有力な性能向上を図れるのでとても悩ましい。ペナルティ無しでいくらでもポイントのリセットが可能な点はポイント高し。

スキルにおいて興味深いのが一般兵と連動する効果を持つものがあり、これはビルドを構成する一要素に一般兵の存在が含まれてることを意味する。各ミッションにはヒーローの他にも一般兵の参加枠が設けられてるため、自ずとヒーローと一般兵との相性を考慮に入れた運用が必要になる。これはなかなか面白い要素だ。一般兵はあくまでも助攻ではあるが、小規模なRTS故にその存在感はかなり大きなものになってる。

装備もビルドの方向性に大きく関与する。攻撃力や防御力の単純なアップだけではない多様な効果が付与され、中には草むらからの奇襲を強化するといった戦術にダイレクトに響くタイプもある。各ミッションで入手できる装備は固定されており、敵のドロップから入手できる。取り逃した装備の数はワールドマップ(ミッション選択画面)で確認できるようになっており、一度クリアしたミッションに再チャレンジすることで取りこぼしの回収ができるようになってる。

スキル、装備からなるキャラビルドは戦術を練る上での一つの測面だが、戦術を支える土台である兵科にも触れよう。各兵科には有効なシチュエーションや弱点が用意されており、それらで成り立つ敵や味方との相性は三すくみほどシンプルではないがジャンケン的と言える。簡潔に例えると剣兵は飛び道具に強いが鈍足で攻撃力が低く、騎馬兵は高スピードだが槍に弱い。その仕組みへの理解はバトルに奥深さをもたらすと同時に、苛烈さを増していくミッションへの対抗策として十分な活用が求められる。それだけ本作のミッションにはゴリ押しでは嚙み切ることができない歯応えがある。

各々のロールの長所を活用し弱点を補うべし

私は3段階ある難易度のうち真ん中のノーマルで終始プレイし続けたが、前述のビルドや兵科の相性を考慮に入れて、初めてクリアへの道筋が見えてくる難易度バランスだと感じた。もちろん考慮するのはそれだけでなく、バトルの主体となるユニット操作によるアプローチもそうだ。茂みでのアンブッシュ、挟撃、側面や背面を狙うといったアクション的戦術を駆使して戦況を有利に進められるよう工夫を凝らす必要がある。そのプレイ内容は伝統的なものなので、このジャンルに慣れてるプレイヤーであれば直感的に戦術を組み立てることができるが、あまり慣れてないプレイヤーはイージーから始めた方がいいだろう。個人的には思考と瞬発力をほどほどに要する絶妙なバランスでとても好印象。

草むらに潜伏して奇襲をかければ敵部隊は混乱に陥るよ!

全16のキャンペーンミッションは戦地のロケーションも含め様々なシチュエーションが用意されてる。ミッション内容はいずれもエキサイティングなシーンの連続で、少数の味方で多勢の猛攻を凌ぐシーンはミッションのハイライトと言える。各ミッションにはさらに難易度を強化する縛りチャレンジや、達成することで追加経験値を得られる様々なお題が用意されてたりと、クリア以外のお楽しみも用意されてる。経験値稼ぎ、もしくはビルドを試すためにトライするのも一興だ。

忘れてはならないのがRTSとしてのお馴染み要素である生産、建築、拠点のキャプチャー要素。これらはかなりシンプルなシステムとして採用されており、生産できるユニットは一般兵と2種の攻城兵器のみで、建築物も見張り台と防柵のみ。そしてそれに伴うリソースはコインと木材しか用意されてない。拠点は体力の回復と生産施設という2つの機能を持っており、各ステージに複数個所設置されてる場合が多い。一部のシーンではRTSらしく拠点の陣取り合戦が行われるが、あくまでも一部のシーンのみとなる。それらお馴染み要素はプレイ中、常にセットとして帯同してるわけではなくミッション中の一幕における、必要に応じて登場する要素として扱われてる。ここらへんからも”小規模”が感じられ、本作は分隊ベースの連携とバトルにフォーカスしてることが分かる。ただしこれらの要素はキャンペーンとマルチプレイで占めるウェイトが変わってくると思われる。

プレイ面以外ではBGM良し、おかしくない日本語訳、不具合ぽいものは見当たらない、動画とテキストで説明してくれる良心的なヘルプページ、といったプラスに感じられるいくつもの点が確認できた。反対に気になった点が2つ。グラフィックがやや貧弱なところと、任意でのセーブができないこと。グラフィックに関しては本作の魅力を損なうほどのものではないが高めの設定にしても少し物足りない。セーブに関してはミッションの進行に応じてオートセーブされるものの任意のシーンでセーブ&ロードできないのは残念だ。ちなみに各ミッションはほとんど30~40分ほどのボリュームとなってる。

中世テーマ+分隊ベース+RPGを足した「The Valiant」からは総じて完成度の高さが感じられた。小規模スケールの戦場にはダイナミックな戦術をぶつける楽しさと成長を実感できるRPGライクな喜びが詰まっており、奇をてらわない伝統のシステムや世界観が支えることで遊びやすさと受け入れられやすさも持ち合わせてる。とくにこの馴染みやすいスケールは私にがっちりフィットしてくれて、プレイ中は熱中しすぎてスクリーンショットを撮ることを忘れてしまうほどのめり込めた。

今回はマルチプレイには触れなかったが、PvPとCo-opが用意されてるのも強調しておきたい。いずれも個別の進捗が用意されてる他、ネームプレートやアイコンの装飾といった要素をアンロックすることができる。満足度の高さも伺える作品だ。