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30年ぶりに帰還した「The Bard’s Tale Ⅳ: Barrows Deep」クリア感想 (ネタバレなし)

    
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30年ぶりに帰還した「The Bard’s Tale Ⅳ: Barrow...

海外の老舗RPGのシリーズ最新作「The Bard’s Tale Ⅳ: Barrows Deep」をクリアしたので感想をば。ストーリーに関するネタバレは避けています。結論から言ってしまいますと、”最高のRPG体験”でした。

作品概要

「The Bard’s Tale Ⅳ: Barrows Deep」は「The Bard’s Tale」シリーズのナンバリング第4作目にあたり、米国 inXile Entertainment が開発・提供しています。2015年6月にKickstarterでクラウドファンディングをスタートさせ、ざっくり計算でおよそ1億5千万円もの資金調達に成功しました。それもそのはず、「The Bard’s Tale」シリーズは1980年代のコンピューターRPGを代表する、海外で人気を誇った作品だったからです。その最新作が2018年9月、30年ぶりに帰還しました。

ゲーム内容

一人称視点での探索中に敵と接触にすることにより戦闘画面へと移行するシンボルエンカウント制を採用したダンジョンクローラー。戦闘は各キャラに命令を与えていくコマンド式のターン制バトル。ストーリー主導型のゲーム展開で、メインクエスト以外にもサブクエストが存在、メインストーリーとは関係ない、いわゆる隠しダンジョン的なものもいくつか用意されています。過去作同様、主人公含めパーティーキャラを作成・編成できるが、進行中に加わる固定仲間キャラも多数登場する。

ステージの作りは、マップからマップへローディングを挟んで移動する形となっており、一マップのボリュームは大きめだが開けている構造というわけではなく、比較的リニアな構造になっています。広範な地域が舞台なので要所要所を結ぶワープポイントが用意されているが、ファストトラベル機能はなし。道中は歯ごたえのあるパズルや謎解き、トラップが行く手を阻み、要所要所でボスが待ち構えています。

作品全体の特徴として、パズル・謎解き要素と、戦略性が高いバトル、豊富な探索要素、全編フルボイス、美麗なグラフィック、が挙げられます。

世界観説明

中世ファンタジー作品にありがちな剣と魔法の時代、モンスターや悪の軍団が闊歩しているCaithという世界が舞台。今までのシリーズ内にも登場したSkara Braeという街とその周辺地域を冒険することになります。前作から100年後という設定で、プレイ中は過去作との繋がりに触れることになるが、知らないと困るようなシーンはとくになし。エルフ、ドワーフ、ゴブリンなどファンタジー作品ではお馴染みの種族・モンスターが登場する一方、今まで登場したノームやホビットなどの一部の常連キャラの姿は消えた模様。ゲーム世界のデザイン、音楽ともにケルティックな雰囲気を帯びており、声優と歌手にはイングランドとスコットランドの方々を起用するなどこだわりが見られます。

クリア後の感想

久々にめちゃくちゃハマッたRPGとなりました。本当に面白かったです。ですが、「Bard’s Taleの続編」を待ち望んでいた層からすればあまりにも変化している点が不満に繋がるかもしれません。そういった懸念や前作との変化については後述するとして、とりあえず良かった点というか個人的にお気に入りの点から挙げていきます。

■戦闘が面白い

これが一番声を大にして伝えたいことですね。戦闘が面白いんです。画面だけ見ちゃうとシンプルなコマンド式の戦闘に見えるんですが、グリッドベースのポジショニング、ランダム要素のない数値計算、素早さによる行動順の排除等々、全ての要素がうまい具合にミックスされて上質な戦略性を生み出しているんです。この戦闘、プレイしていると感じるんですが、ストラテジックなカードゲームを遊んでいる感覚に近いものがあります。ランダム要素がない(一部確率発生する付加効果は有るが)ので戦略が組み立てやすく、故にそこまで理不尽な目に会うこともありません。戦闘の結果は常にプレイヤーがとった戦略の結果で、敵の”穴”を見つけどう崩していくかを毎ターン考えるのが楽しいんです。今作ではシンボルエンカウント制に変更され、敵の数はストーリーの進行により再配置されたりはしますが有限と考えていいです。Bard’s Taleに限った話ではありませんが、RPGの醍醐味の1つとして”レベル上げ”を楽しみにしている方もいると思います。それが堪能できないことになるわけですが、これに関してはレベルを上げにくいことによるフェアな戦闘を楽しむための措置であると私は捉えました。成長要素がある以上敵との力関係に多少の優劣はどうしてもついてしまいますが、先程挙げたストラテジックなカードゲームのような戦闘を存分に楽しむためには必須ともいえる下地ではないでしょうか。常に適正の敵と戦うことになるので、バランス良く楽しめ、ときには歯ごたえを感じられ、戦略・成長の方向性を練ることにやりがいを見出せます。ぬるすぎる雑魚戦に付き合わされる必要もありません。従来のRPGの戦闘にどこかしらマンネリを感じていたゲーマーにぜひ触れていただきたく思います。

■充実した探索要素

パズルわんさか、隠し扉あちこち、建造物や景色もすごい綺麗で非常に探索し甲斐があります。最近流行りがちなオープンワールドと比較すると、ジャンルの特性上リニア感および迷路感が強いマップ構成にはなっていますが、探索要素の密度が濃いので、広大なオープンワールドのボリュームに負けないくらいの満足感を得られました。一人称視点による没入感の高さも一役買っています。ストーリーを進めていくと今まで閉じられていたエリアに入れるようになる能力を得たりするので、何度も過去のマップを再調査する楽しみもあります。ダンジョンクローラーなんだから当たり前だろうと思うかもしれませんが、ちゃんとこういったワクワクを体験をさせてもらえるのは、プレイしていて嬉しくなるもんです。Bard’s Taleシリーズのフレーバーがしっかり感じられる部分でもあります。

■パズル・謎解きの難易度

これが気になってこのゲームに手を出しにくい方もいらっしゃるかもしれません。メインクエストに絡むパズルに関しては、”高難易度”という印象はありませんでした。手こずるシーンは何度かありましたが、少なくとも詰まるような事態にはなりませんでした。英文からヒントを得なくてはならないシーンが何度かあったので、そこが人によって評価が左右してしまう所かもしれません(英語の得手不得手の問題ではありますが)。ところがいわゆる隠しダンジョンのような、メインクエストには絡まないダンジョンなどで遭遇するパズルとなると難易度が跳ね上がります。ここは高難易度と言っていいかもしれません。ですが、昔のバーズテイルで見られたような理不尽なトラップルームなどは出てこないのでちょうどいい歯ごたえの範疇に収まっていると思います(※個人的見解)。視界ゼロの中で室内の構造を一歩ずつ手書きでメモするようなシーンはありませんでした(笑) パズルや謎解きの難易度バランスって凄くシビアな要素です。簡単すぎてしまったらただの鬱陶しい障害物でしかありませんから。ですが本作の場合、きちんとひとつの主食として昇華されています。最後までおいしくいただけるはずです。

■音楽と色彩が豊か

私が個人的に民族音楽が好きだというのもあると思うんですがケルト音楽をベースとした楽曲が本当に素晴らしい。町の通りを歩いているだけでも人々の歌があちこちから聞こえ、戦闘中にもかっこいい歌が流れてきます。題材がBard(吟遊詩人)なだけあって”歌”に力を入れているのが伝わってきます。いいオーディオ環境をお持ちの方はぜひとも温もり感じられる良質サウンドを堪能していただきたく思います。戦闘中、探索中問わずキャラが喋りまくるのも冒険に華があっていいですね。一気に賑やかになります。Caithの世界を彩る豊かな色彩も見どころ。自然豊かな屋外フィールドから禍々しさ溢れるダンジョンまでオブジェの造形含めとても美しいです。音楽も色彩も豊かなのでプレイ中は目と耳が飽きることはありませんでした。一部テクスチャが粗いのと大味な3Dキャラクタモデルがちょっと残念でしたが。

■技術的な不具合

プレイしていて不快だった点がありました。CTDの頻発です。CTDしてからの再開時は最後のセーブポイントまで遡ることになるので場合によってはかなりのタイムロスになります。これはあまりプレイ時間を割けない人にとってかなり悔しい。参考までに私のBard’s Tale 4プレイ時のマシン構成はGTX1060、i7-8700、SSD、メモリ16Gで、グラフィック設定はウルトラにしてプレイしていました。密度が濃いエリアだとフレームレートが60から30程度に低下するくらいで、とくに重く感じるシーンはありませんでしたが、ストーリーの中盤あたりから一時期CTDが頻発してしまいました。特定の箇所で起きていたわけではないのでCTD条件は不明。序盤と終盤はCTDが無かったのが不思議です。あと戦闘中、敵のターン時に敵が不自然なまでに長考してしまうシーンが何度か。さらにパズル時にブロックをリセットする機能が正常に働かないバグが発生し、再起動しても治らず諦めるしかない状況になりました。メインクエには絡まない場所だったのが不幸中の幸いでしたが。これらは今後アップデートで改善されることを願います。幸いにもアップデートはこれまでに何度かあり、その他の不具合も含め改善に向かっているようです。

■ボリューム

1周目終えた時点でのプレイ総時間は約80時間ですが、サブクエもそこそこ消化していきましたし、中座やCTDによるやり直しなどがあったのでメインクエクリアにかかる実プレイ時間はもっと少ないです。EDを見るだけなら50時間程度でしょうか。もちろん謎解きの解決スピードなどによる個人差で大分増減しますが。公式では40時間~ということらしいですが、おそらく初見で40時間で終わらすのは難しいと思います。隠し要素などの全制覇を目指すとなると+30時間~といったところでしょうか。RPG1本としてはボリューミーだと思います。

■ドラマ性に期待するな

ストーリー主導でゲームが展開するわけですが、ドラマチックなシーンはありません。まぁ最初からそこには期待していませんでしたが。本作の主軸はやはり戦闘し、探索し、次のダンジョンに進む、という伝統のダンジョンクローリングです。ドラマ性も合わされば完璧ですけどね。

■「Bard’s Taleの続編」なのか

このゲームかなり評価が分かれる要素を孕んでいます。それは「Bard’s Taleの続編」として考えてみたときに、前作からあまりにも様変わりしすぎてしまっている点です。もちろん重要な役割を果たす歌、探索要素、一筋縄ではいかないダンジョン踏破、といったシリーズの伝統を受け継いでいる部分もちゃんとありますが、Bard’s Tale1~3のあの雰囲気を期待していたファンの中にはBard’s Tale4に面食らった人もきっといることでしょう。30年も経てばビジュアル、戦闘方法、いろいろ変わって当然かもしれませんが、ひと際目立つ変化は核の部分でもある「ロールプレイング性」の減少ではないでしょうか。パーティーメンバーを一から作る往年の要素が今作では影を潜めてしまっているからです。キャラクリエイト機能はもちろん備わっていますが、ストーリーをある程度進めなければ触れることができず、過去作と比べ選択肢が減少しており、そもそも必須ではありません。キャラ作成時にアイテムが必要だったり、ストーリーを進めないとパーティー加入枠が増えなかったりと制限がかかっている上、たとえ自分で作成したキャラだけでパーティーを組んでたとしても、ストーリー上多くの個性豊かなキャラたちが強制加入しますのでロールプレイング性が乱れがちになります。自分の脳内設定を具現化させニヤニヤしていたコアでオールドなRPGファンはここら辺に不満を持つ可能性があります。それに加えシンボルエンカウント制の導入もかなり賛否別れるポイントだと思います。同じく核の部分である戦闘への介入方法がガラッと変わり、ゲームの雰囲気を大きく変えた要因とも言えます。こういった変更により不満の声が挙がるであろうことは開発元のinXileもわかっていたはず。私は本作をプレイしていく中で、一切迷いがないinXileの自信のようなものが感じられました。不満の声が挙がるのは当然のこととし、それでも「これでいいのだ」という自信です。でなければこんなに丁寧に作り込めませんし、ここまでの高いクオリティに達せません。各システムを始め、パズルや隠し要素も中途半端にすることなく作り込まれています。先に挙げたキャラクリエイトの制限もそれだけに着目するとマイナスポイントですが、ストラテジックな戦闘を楽しむためのフェアな下地作りという点では必要不可欠なポイントとなります。作品を現世代に適用させ、全体を活かすために核の部分にすら手を加えるというリスキーなinXileの判断、私は素晴らしい仕事をしたと思います。たしかにBard’s Tale4をBard’s Taleの続編として考えてみたときに人によって疑問符がつくのは否めませんが、「Bard’s Taleの続編」というのを一旦切り離して「2018年の新作」として捉えてみたとき初めてこの作品の真価が見えてくるのではないでしょうか。

感想まとめ

よくぞここまでのRPGを作り上げたなと素直に感動しました。とくに戦闘。この先このシリーズがどうなるのかは分かりませんが、この戦闘システムはこの作品だけで終わらすにはもったいなく思います。これ単品でアーケードライクなスピンオフ、それこそカードゲームのようなものを1本くらい出してもいい気がします。付け加えて、単なる障害物に終わってない入念に作り込まれたパズル、そして冗長なカットシーンを並べてボリュームをかさ増しするわけでもなく、きちんとプレイヤーに密度の濃い”遊び”を提供する作りも素晴らしく思います。ただ前述した技術的な面と、ストーリー終盤での後戻り不可の告知が無い点が残念でした。てっきりED後は自由行動になると思ってたのに…。ですが、そんな残念ポイントが些細なことのように感じられるほど充実した体験ができたのは間違いありません。久々に濃厚なゲームやったなーという充足感を得られ大満足です。おっさんになると純粋にゲームと向き合うのが難しくなるわけですが、それでものめり込める作品と出会えたことを嬉しく思います。

inXileといえば、本作Bard’s Tale4の売り上げ次第ではInterplayの版権を買い戻すと言っています(inXileの設立者はInterplayの元設立者)が、なんかあまり好調のようには見えないので心配です。なんとか目標値に到達してほしいものです。それと当ブログにはBard’s Tale 4の攻略記事もございますので参考していただければ幸いです。

「The Bard’s Tale Ⅳ: Barrows Deep」新要素・システム解説

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