タクティカルRPG『Expeditions: Rome』レビュー | 軍団長ライフは選択の連続

【2022/1/19】ちょっと記事を修正しました。

ターンベース・タクティカルRPG『Expeditions: Rome』のレビューをば。

本作のレビューをするにあたり、THQ Nordic Japan 株式会社様よりSteam版を先行プレイする機会をいただきました。

Expeditions: Romeの概要

ジャンルRPG・ストラテジー
対応プラットフォームPC
日本語実装字幕あり
価格5,850円(Steam)
開発Logic Artists
パブリッシャーTHQ Nordic

ローマの未来は君の手にある。果たしてどのような伝説を作るのだろうか?

君は若き軍団長。謎の政敵に父親を殺されたことでローマから逃げることになり、ギリシャ反乱の鎮圧軍に身を潜めている。一歩ずつ武勇を高め、戦闘で自らの力を強め、誰もが尊敬し、そして恐れられる軍団長になろう。『Expeditions: Rome』では、ギリシャの鮮やかな青い海からガリアの深い森まで広がるワールドステージでの君のアクションでローマが変わる。君とローマが人からどう見られるか決めるのは君自身だ。鉄拳制裁するか、雄弁に語りかけるか?共和制の政治的指針を引き継ぐか、元老院の複雑な政治の中で自らの道を切り開くか?ひとつひとつの選択が軍団、仲間、そしてローマの運命を決める。

Steamストアページより引用
攻城戦を紹介するトレーラー

Expeditions: Rome
プレイ感想

プレイ時間約60時間 (未クリア)

本作は『Expeditions』シリーズの3作目。古代の共和制ローマとその周辺国を舞台に、貴族である父の死をきっかけに主人公は戦争と政争の道を歩むことになる。

Expeditions: Romeの代表的な特徴として「プレイヤーに委ねられる豊富な選択視と結果」、「資源の管理」、「洗練されたタクティカルバトル」「軍隊の指揮・管理」が挙げられる。

一見複雑そうにも感じられるがいざプレイしてみるとRPGとしてはオーソドックスな作りだしチュートリアルが完備されてるため遊びやすい。しかしその道のりは決して平坦ではない。

多彩な戦術を試せるバトル

主人公キャラ作成時。各クラスに用意されてる3タイプのサブクラスのうち1つを選択するが、ゲーム中はサブクラス間に制約はないためハイブリッドな育成も可能。

本作のターン制バトルはシンプルなルールのため把握に時間はかからない。しかし戦術の試行錯誤にはいくらでも時間を費やすことができる。研究しがいのあるビルドや連携、様々な特性を持つ装備、地形利用、形勢逆転の可能性を秘めた戦術アイテム等の多彩な要素を活用し、パーティーベースの豊富な戦術アプローチを実践できる。本作のバトルはターンベース好きに楽しい時間を与えてくれる私の推し要素だ。

民間人が入り乱れるカオスな局面も

バトルへの突入は事前に準備できるときもあれば、イベント中の選択の結果意図せぬ形で始まるケースもある。基本的にプレイヤーパーティが不利となるシチュエーションでスタートする機会が多いためバトル突入前後はプレイヤーに緊張と思考をもたらす。それを払拭しようと地形や敵の配置を観察し攻略法を練る時間は最高に楽しい。戦闘フィールドのデザインの秀逸さによるところも大きいだろう。

敵の殲滅だけが勝利条件ではない

一筋縄ではいかないバトルだが、ニューゲーム時の難易度設定に加え、ゲーム内オプションからさらに細かな難易度調整が可能な点は嬉しい。難易度の参考として、私はミディアム難易度でしばらくプレイしてたが準備さえ怠らなければそう簡単にピンチを招くようなことにはならなかった。

しかしそういった状況はどうもモチベーションに欠ける気がしたため、途中からひとつ上の難易度に設定した。狙い通りそちらの方が断然楽しめる。イージーすぎるとバトル前の準備、つまりパーティーの管理や装備のクラフト、ひいてはこの作品全体の持ち味が薄くなってしまうように感じた。Expeditions: Romeのバトルは常に全力の準備と戦術をぶつけてこそ輝く。

難易度の感じ方は人それぞれだろうが、私としてはややイージーに感じるようならぜひ難易度を上げるよう調整するのをオススメしたい。

困難と喜びが待ち受ける探索

フィールドマップではお宝の発見や多種多様なランダムイベントとの遭遇が待ち受けており、プレイヤーの移動に応じて徐々に世界の姿が露わになる。どこに街があり、どこで資源が調達でき、どこに落とすべき敵拠点があるのか。ロケーションの位置が判明しないと軍団の行軍はできない。プレイヤー率いる親衛隊パーティは物語を進める駆動役でありながらフィールドマップにおいては軍団の先遣隊としての役割も果たすことになる。

ランダムイベントは行動の結果がとにかく読めないため不穏な空気が漂う

フィールドマップで遭遇するランダムイベント中の選択次第では親衛隊の誰かが怪我をしたり、プレイヤーに対する忠誠度が変化したり、お宝や新たなパークを取得したり、奇襲をかけられバトルが始まったりとドキドキハラハラの連続。

イベントやバトルで万が一誰かが負傷した場合には医療スキル持ちに何日も手当させるか拠点の医療テントで治療を受けさせないと悪化してしまうため、そのまま探索を続けるか拠点まで引き返すかの決断に迫られる。さらにフィールドマップでの探索には日数経過に伴う食料と水の残量にも注意を払う必要がある。フィールドマップで待ち受ける予期せぬ冒険と資源の管理はExpeditions(遠征)の過酷さを象徴する要素と言えよう。

なおバトルのみならず探索要素の難易度も調整できる。オプションで好みに合わせたプレイに近づけることが出来るのも強調しておきたい。

広範囲に及ぶ選択肢と濃厚なドラマ

ゲーム中、あらゆるシーンで選択を迫られる。武力もしくは財力で解決するのか、信念を貫くのか狡猾に事を進めるのか、約束を守るのか破るのか、そして誰を生かし殺すのか。どの選択肢も意思表示が明確で分かりやすい点が個人的に好印象だ。

どの選択肢を選んでも相応の結果が待ってる。シナリオに影響するかもしれないし、親衛隊の忠誠心に変化があるかもしれないし、望まぬ闘争が始まるかもしれない。「あのときの選択がまさかここで…」といったように後で効いてくる場合もある。ささやかなシーンでの選択は小さな影響に留まるが、人の生死に関わるような大きな選択はそれに応じた結果をもたらす。

また、悩ましい数々の選択肢は濃厚なドラマへと誘ってくれる。主人公は軍団長として戦いに明け暮れると同時に元老院や他国の支配層との政治的駆け引きにも身を投じる。歴史背景と陰謀が数々の選択と絡み合って進行するストーリーはバトルと同じくらい魅力的だ。

なお、キャラのセリフ、ゲーム内テキストともに文章量が多い本作ではあるが、日本語でプレイできるという点は素直にありがたい。翻訳クオリティは高くないがプレイが阻害されるようなことはないし、それ以上に長文を日本語で読解できるという恩恵のほうがはるかに勝る。

愛すべき仲間たち

クエストをともにする親衛隊の面々は全員もれなく魅力的。各々、性格や信条が異なるのはもちろん複雑な過去や悩みを抱えており、それら背景が劇中での言動の動機として緻密に反映されてる。各キャラの持つ背景は背景だけで終わらず、それらの行く末にもきっちりフォーカスされる。

彼ら・彼女らに歩み寄るのも突き放すのも、好かれるのも嫌われるのもプレイヤーの行動と選択次第。そういった親衛隊からの評価はバトルに影響をもたらし、仲を深めることができればロマンスに発展する。

軍事要素

過去作とは異なる本作の独自要素として軍事要素が挙げられる。プレイヤーは親衛隊を率いて各地でクエストを消化すると同時に、軍団長として敵国の支配地域に自分の軍団を侵攻させローマの支配地域拡大を図る。

赤い領域が敵軍、青い領域が自軍の支配地域。敵軍が地域を取り返そうと攻めてくる場合も

軍事要素は2つの要素に分けられる。まずは拠点について。軍団が地域を制圧すると敵の拠点だった場所に自軍が駐留するためのキャンプが設営される。これは地域間の移動がいつでも可能な移動式ハブと考えてよい。軍団のキャンプ地では装備品の生産、資源の売買、新たな軍略の研究、新兵の採用、各施設のアップグレード等、ゲームを進める上でのあらゆるマネジメント要素にアクセスできる。

次に敵拠点へ進軍して開始される戦パート。こちらはシンプルなシステムとなっており、オートで進む戦の各シーンごとにどのような作戦行動をとるか、その都度選択するというもの。指揮役となる隊長のスキルにより選択肢に出てくる作戦行動が異なる。敵兵の数を減らすのに注力するか、自軍の被害を最小限にするよう留めるか、戦利品獲得を優先させるか、ここでも選択がプレイヤーに委ねられることになる。

これら軍事要素、とくに戦についてだが、メインを張れるほどの華やかさはなく、ゲーム全体における重要性は高いものの、あくまでも味付けを整えたりわずかな刺激を与えるためのスパイスに過ぎない。敵支配地域に軍団を送り込み、勝利し、資源を得て、次の地域を目指す。この一連のプロセスには物語を進めても大きな変化は見られず、次第に作業感が増し退屈に感じてしまった。

動作について

今回の私のマシン環境。

  • OS: Win10
  • グラフィック: GTX1060 6GB
  • プロセッサ: Core i7-8700
  • メモリ: 16GB
  • 画面解像度1980×1080

最高グラフィック設定となるウルトラ時のフレームレートについて。フィールドマップでは60fps前後、バトル時は50~60fpsといったところ。最低プリセット時と最高プリセット時の比較画像も貼っておきます。テクスチャの解像度に大きな違いは見られないものの光と影の描写の差が大きい。

その他

  • いつでも確認できるチュートリアルと専門用語を解説するコーデックスの完備が素晴らしい。とくにコーデックスからはローマの知識を得ることが出来る
  • 完全フルボイス。時勢の変化により町人NPCの噂話に変化が見られる
  • 各地域の気候や空気感を目で楽しめる
  • 助かるオートセーブのタイミング
  • クラフトシステムの解禁がやや遅い
  • 街が広くて移動がダルいが状況によっては戦場となるため仕方がない
  • 装備類のソート機能をもっと充実化するべき
  • バトル中、キャラの移動時に地形にスタックする現象が稀に発生。
  • 猫かわいいよ

まとめ

物語を彩る濃厚な選択肢とドラマ、愛すべき仲間たち、時間泥棒な様々なマネジメント、そして幾通りもの戦術アプローチが可能な最高に楽しめるバトル。Expeditions : Romeには多くの魅力が詰まってる。肝心の軍事要素が退屈に感じられたのが少々残念だが、それを抜きにしても没頭できる作品となってる。私はこれを書いてる時点で3章の途中まで進めてる状態だが続きを早くプレイしたくてたまらない。

攻城戦は全員を動員する総力戦となる。適材適所もプランに入れる必要がある

個人的イチオシはやはりバトル。とくにストーリー上での重大局面で描かれる攻城戦は難しいけどアツい戦いを楽しめる。それまでのプレイで培ってきた全てをぜひぶつけてみてほしい。

本作にはデモ版が用意されてるので気になる方はトライしてみてください。