GOG.com『Devotion』再販中止騒動から1週間経過したわけだが
どこかのタカシさんが言いました。
「言いたいことも言えないこんな世の中じゃポイズン」と。
さて、見渡す限り真っ赤な毒沼が広がった昨今。このブログで常日頃より取り上げさせていただいているGOG.comも例外ではないようだ。
今月GOGで発生した『Devotion再販取り下げ問題』。私は1週間ほど動向を静観していた。この騒動がどういった方向に進み、どう着地するのかと。
まずはこの騒動をおさらいしておこう。
2019年2月、台湾 Red Candle Games 開発のホラーゲーム『Devotion』がSteamストアから撤退。理由はゲーム内におけるC国某党のボスを揶揄する表現に対する”ゲーマー”からの苦情の殺到。
2020年12月16日、GOG.comに『Devotion』のストアページが登場。開発元が12月18日に16.99ドルで再販すると予告。
翌17日、GOG.comが『Devotion』の販売を取り止め、ストアページを削除。理由は”ゲーマー”からの苦情の殺到。
今回のGOGの対応には多くの声が寄せられた。「GOGはC国に屈した」という失望の声、怒り、不買宣言…。
そんな様子を1週間ほど見ていた。
GOGウォッチャーである私はいくつものGOGが引き起こした騒動を見てきたが、間違いなく歴代最悪の状況を招いてしまった。1週間ほど経てばある程度は沈静化の兆しが見えるものだが、今回はそれがまだ見えない。
最悪の状況を示す具体的な影響を挙げよう。
GOG.com subredditの存亡を巡る投票
今回のGOGの行動に嫌悪感を覚えたGOG.com subredditのモデレーターが今後このsubredditをどうするか投票を呼びかけた。
A案: GOGとの関係を絶った上で存続。MOD続行。
B案: このままの形で残す。MOD辞退。
C案: 全消去。
私の情報源のひとつでもあった場所。正直なくなってしまうのは困る。
この件についてGOGスタッフからの声も寄せられており、B案になった場合MODを引き継ぐ考えであるようだ。
該当スレ→https://www.reddit.com/r/gog/comments/kfied6/moving_forward_with_rgog/?sort=new
2021/3/4追記: 正式にSubredditの続行が決定。
コミュニティウィッシュリスト『Devotion』過去最多コメント数
発売してほしいタイトルや実装してほしい機能を呼びかけ、それにユーザーが投票するGOG.comのコミュニティウィッシュリストというシステム。
『Devotion』のページにはとんでもない数のコメントが寄せられている。こんなの見たことがねぇ…。
もちろん通常フォーラムでも騒動関連の議論が連日なされている。DiscordのGOGサーバーも同様だ。
該当ページ→https://www.gog.com/wishlist/games/devotion
Cd projekt株価落ち込む
17日にそれは起きた。
ご覧の通りである。
問題続きのサイバーパンク2077の訴訟報道も拍車をかけているだろう。
兎にも角にも未だに各所でリアクションが噴出しているのが現状だ。
世界各国のあらゆる分野で影響力を強めるC国への反発心に加え、「あの」GOG.comが取った行動にユーザー達は衝撃を受けてしまったのだ。
私はGOGを応援している。それは、風当たりが強いであろうDRMフリーを提供する、という反骨精神に惹かれているから。若かりし頃からレベルミュージックを好んで聴いてきた私にとって、GOGはゲーム界における”反逆のカリスマ”なのだ。
GOGを支えてきたコアユーザーはGOGの精神性を高く買っていたところが多分にある。ところが、今回の件でそんなコアユーザー達に激震が走った。反逆のカリスマだと思われていたGOGが、”ゲーマー”からの苦情に屈服したのだ。私ももちろん衝撃を受けた。
だがGOGの判断は理解できなくもない。経営するということは何かと何かを天秤に掛けることの連続だ。大局的視点から見るに、天秤に掛けられたのは「合理性」と「思想」といったところだろう。
結果、合理性の方が重くなったわけだが、天秤の皿に一体どんな材料を乗せていったのか知りたくはないか?
Devotionかサイバーパンク2077か
フランスのビデオゲームメディアjeuxvideoの記事に、今回の件の裏側に迫る内容がソースと共に記されている。
要約すると、Devotion再販を知ったC国ネットユーザーがいつも通り足並みを揃え非難声明を出し始めた。GOGが言うところの”ゲーマー”だ。彼らの存在は◯博でのみ確認できるのでTwitterで調べても出てこない。
※実際に見に行っても火消し済み。
彼らはリリース間もないサイバーパンクを人質にとることにした。CD Projektの◯博アカに対し、Devotion再販を取り止めないとサイバーパンクをボイコットするぞ、と。
ここでGOG及びCDPは突きつけられた。Devotionとサイバーパンク、どちらを選ぶか。後は周知の通りだ。
サイバーパンクのセールスプランにおいて、C国での売上見込には間違いなく期待がかけられていたはずだ。今や世界一の影響力を持つ市場を手放すわけにはいかなかったのだろう。
(それが思う壺なのだが)
この判断に私含め多くのユーザーが衝撃を受け、現在の状況になってしまったわけだ。そりゃ資本が拡充されれば主張したい事を実現しやすくなるし、サイバーパンク2077のようなビッグタイトルをプレイできるのはその成果でもある。
たしかに理解はできる。だが、だからといって看過はできない。抑制からの開放、それがDRMフリーの存在意義だ。それを信念として掲げてきたのがGOG.comだったはずだろう。それが、外圧によって自我を捻じ曲げるという前例を作り上げてしまったのだ。
いつの日か、金のためならDRMフリーすら手放す日が来るかもしれない。声を上げるユーザーは皆それを危惧している。
上場企業の宿命だとか、エンターテインメントはとっくに屈従しているとか、そんなことは分かりきっている。私が言いたいのはそんなスケールの話ではない。
局面を二分割で語るのはいかにも獣じみてて私の望むところではないが、あえて使わせてもらう。今回の件は私にとって”物質対精神”の領域に及ぶ極大であり極小でもあるスケールの話なのだ。大げさではなく、これは世界に住まう人々の今後を占うテーマでもある。この騒動がどう着地するか、しばらく注視していくつもりだ。
追記
ポーランドを代表する企業へと成長を遂げたCD Projektにとって、GOGの存在が矛盾したものになってきているように見える。整合性が取れなくなってきたのは重々承知だろう。今回の件以前からも度々ツッコまれているトピックだ。
少々過激な表現かもしれないが、CDPはそろそろGOGを切り離すべきなのかもしれない。