ローグライトFPS「Void Bastards」クリア感想

「Void Bastards」をクリアしたのでその感想をば。

❏作品概要

開発はBlue Manchu。「Card Hunter」という高評価なカードゲーム×ボードゲームのF2P作品を以前リリースしており、「Bioshock」、「System Shock 2」のディレクターさんが参加されています。パブリッシングはHumble Bundleが担当。

本作「Void Bastards」のジャンルはローグライトFPS。操作キャラは基本的にパーマデスという条件のもと、ランダム生成されるステージでストーリーを進めるためのアイテムを探索することになります。

操作キャラが死亡すると、ランダムな能力を持った次の操作キャラに新たに切り替わります。それまでにアンロックした”装備類”、”集めたクラフト用素材”、”ストーリーの進捗”は維持されます。

サルガッソ・ネビュラという宙域を舞台にしたSFテーマとなっており、アメコミ調の演出がこの作品の大きな特徴となっている。

GOG.com、Steam、Humble Bundleで販売中。日本語字幕対応。ちなみに私はGOG版を購入。

Youtube:https://www.youtube.com/watch?v=hlzb3daWb7M

❏クリア感想

Ver.1.1.2、難易度ノーマルでクリアした際の感想。

目が楽しい

この作品の大きな特徴、目を引くアメコミ調グラフィックが賑やかで楽しい。ストーリーが進む際のカットシーンはまさに漫画を読み進めるスタイルで進行していきます。イベントは毎度オチが付くコメディ路線。戦闘時のエフェクトも派手でとにかく目が楽しい。探索ステージとなる宇宙船内の効果音も漫画のように文字で表示されますが、これを上手くゲーム内に落とし込めています。各部屋に入る前、扉に近づくとその部屋にいる敵の足音が文字で表示されるのですが、敵の種類ごとに表示される足音が違うので、部屋内にどんな敵が待ち構えているか推測できるようになっています。また、敵がこちらの存在を察知したときは What? と囁くセリフも同様に表示されます。視界を邪魔することなく、コミック調の演出とゲーム内システムを上手く絡めた見事な要素と言えます。これはとても感銘を受けました。

多様なランダム要素と試される戦略

プレイのキモとなる部分。ランダム要素によりプレイに関する多様な制限がされる中で、プレイヤーの一挙手一投足が試されます。

ステージとなるそれぞれの漂流船には””電源が落ちてる”、”敵のリスポーンポイントが多い”、”酸素が少ない”、”故障個所が多い”などの事象がランダムで付与されています。漂流船の種類も多く用意されており、それぞれ構造、見つかるアイテムや弾の種類が異なるといった特徴があります。操作キャラは死亡する度に能力がランダムで切り替わります。”咳をしょっちゅうするため敵に存在を察知されやすい”、”確率で弾詰まりを起こす”、”警備タレットに常に狙われる”などのデメリットの他、”ダッシュが速い”、”背が低く敵から視認されづらい”、”食料を見つけやすい”などのメリットとなるものまで用意されており、その数はかなり豊富。これら能力は道中で変更や消去が可能な場合があります。

ステージ選択マップでは漂流船の付与要素、棲みついている敵タイプ、入手可能なレア素材を常に確認できます。長く生存し、目標となるキーアイテムを入手するために、これらプレイを制限するランダム要素と、残りHP、食料・燃料、弾数といった自身の現状を顧みた上でどの漂流船に歩を進めるか戦略的に考える必要があります。しかしながら、他にもプレイヤーの企てた戦略を覆す要素がいくつもあるので、思い通りに事を運ぶのは困難。故に目標を達成したときの喜びは一塩です。

この素材欲しいけど敵が厄介そうだな…とか、食料と燃料豊富だからどんどんスルーしていこうとか、戦略的に一歩ずつ進めていくのがこの作品の面白いところであり、ランダムゆえのエキサイティングな展開はローグライト好きに刺さること間違いなしだと思います。

もう少し視野を狭めた戦術面で、私がとくに面白いと思ったのは、部屋の出入り口ドアの利用。ドアをロックすることにより敵の通行を妨げたり、敵のリスポーンポイントを封鎖し事実上の湧き潰しといったことができるほか、わざとドアを開けておき誘い込んだ敵を室内のタレットに迎撃させることも可能です。ドアの開け閉めだけで戦術にバリエーションが生み出されている点は面白いです。

ほどよい難易度

上記で挙げたランダム要素は状況によっては難易度の上昇に繋がる要素ですが、逆に難易度を下げる働きを持つ要素も存在します。それは操作キャラが死亡しても、”クラフトした装備類と集めたクラフト用素材は引き継がれる”ということです。これは言わばキャラの成長要素とも受け取れます。装備類は多くの種類が用意されており、武器の他にも”最大HP増加”、”酸素増加”、”特殊ダメージ半減”などのパッシブ効果が得られるものが存在し、クラフトすれば戦闘が少しずつ有利になっていきます。ですので、たとえ大きな成果を得られず操作キャラが死亡してしまったとしても、ちょっとでも素材を持ち帰っていればそれは無駄な死ではなかったということであり、小さくても前進を続けていればいつかクリアの道筋が見えてくるようになっています。私がプレイしたノーマルに限った話にはなりますが、ローグライトが苦手な方、または初めて触れてみる方にもオススメできる難易度ではないかと感じました。

もちろんもっと上の難易度や、完全ロストしてしまう最高難度も用意されているのでチャレンジャーにとっても挑戦し甲斐があります。

肝心の戦闘は…

FPSなので戦闘はやはり大事な要素。ですが、正直気になってしまう点がいくつか見られました。まず、エイミングに関して。ADS動作は存在しません。昔のFPSのように、常に腰ダメです。個人的にはその仕様でも全然かまわないのですが、いかんせん集弾性能がよくありません。敵の頭に照準をぴったり合わせていても距離が離れていると正確に当たってくれません。常に死に怯えている状態、なおかつ1発も無駄に出来ない状態で、こういったことが起きるのは正直不服でした。「えっ、今の当たってないの?」というシーンがしょっちゅう。

あとは敵が放つ攻撃が避けにくい点。敵の攻撃の命中率が高いのか、もしくは1発当たりのダメージ判定範囲が広いのかは分かりませんが、避けたつもりでもガンガン敵の弾が当たります。さらにこちらが被弾を避けるためカバーに入っても、敵はこちらの位置を透視しているかのような挙動で攻撃の手を緩めることはないので、カバーから顔を出すと同時に被弾してしまいます。

戦闘に関してはこれらのことと、強力な敵が多いことも相まって若干ストレスを感じてしまうことがありました。銃や爆発物、敵の多彩さはプレイしていて楽しかったですけどね。

あとはステルスシステムがあるのなら近接攻撃でバックスタブも出来るようにしてほしかった。次回作があるのならぜひとも実装してほしい。

日本語とUIは完璧

日本語訳の違和感が全くなく完璧です。嬉しかったのは漂流船内の各部屋を示す電光掲示板も日本語表記になっていたこと。部屋の役割はとても重要なため、直感的に分かりやすいこの仕様はとてもユーザーフレンドリーです。ユーザーフレンドリーといえばUIに関してはとても見やすく把握しやすく、非の打ち所がない出来だと思います。とくにステージ選択画面やクラフト画面などではキャラのステータス、各漂流船の状況、必要な素材などが一括管理され、しかもコミック風にうまくマッチしており、お手本のような構成です。

❏感想まとめ

戦闘に関してはイマイチ腑に落ちない部分があったが、そんなマイナスポイントが霞むくらい全体的にうまくまとまっていてとにかく完成度が高いです。バグや動作不良といったことに見舞われることもありませんでした。プレイ時間は運にもよるが1周につき15時間前後といったところで、内容自体は最後までシンプルなので何周もプレイしない人にとっては定価3,000円は少々割高に感じられるかもしれません。それでもこのグラフィックは一度体験しておくべきです。私はこのグラフィックに惹かれ定価での購入を決断しましたがその価値はあったと思います。なによりプレイ内容含め、ゲーム全体を通してのオリジナリティ溢れる雰囲気が素晴らしい。続編を期待せざるを得ません。