ゲームとステーブルコイン
7月にクレカ会社による表現規制がゲームプラットフォーム界隈で話題になりましたが、以前から同様の事案がいろんな業界で問題化してます。これ結局のところネット経済のインフラをどこが掌握してるのかっていうのが浮き彫りになった事案と言えるでしょう。
時を同じくして7月に米国でGENIUS法が成立しました。ステーブルコインのインフラ化の下地が整ったわけです。日本でも円建てステーブルコインJPYCが今秋発行予定など着実にその存在感が高まってます。
ステーブルコインの既存システムに対する脅威や政策的側面とかの話は今回置いておくとして、その利便性は手間もコストも抑えられるところにあります。決済や送金の手段として優秀なのはもちろん、スマートコントラクトで自動化させるなど柔軟な設計を行えるのも利点です。何より情勢的にアンバンクト層はどんどん増えるでしょうから、各国で法整備さえ進めば利用者もどんどん増えていくのは決定的と私は見てます。
早い話が実用に足り得る代替インフラが構築されつつあるということ。事実Amazon、Walmart、Expediaがステーブルコイン発行の検討段階にあると報じられてます。さてここでゲーマーとして気になるのがゲーム産業における機会獲得の可能性です。事例を見てみる前にステーブルコインとゲーム産業がどのような形で関わると考えられるのか、それを共有しましょう。ちょうどいいプレプリントを見つけたので貼っておきます。
Stablecoins as a Catalyst for Democratizing Gaming Payments and Beyonda
https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=5383096
以下AI要約
論文の主張
- ステーブルコイン(USDCやRLUSDなど)は、ゲーム産業における決済を民主化する鍵となる。
- クレジットカード会社(Visa・Mastercard)に依存した現在の仕組みは高い手数料・為替コスト・送金遅延・規制によるコンテンツ制限といった問題を抱えている。
論文が指摘する課題
- 高コストと決済の遅延
- クロスボーダー取引ではFX手数料や規制対応が重くのしかかる。
- 少数の決済事業者に依存しており、突然の規制や企業判断でアクセスが制限されるリスクがある。
- 金融包摂の不足
- 世界のゲーマー人口の69.4%はアジア・アフリカに集中しているが、銀行口座やクレカを持たない人が多数。
- 既存の決済ネットワークにアクセスできない層が市場から排除されている。
ステーブルコインによる解決策
- 即時決済と低コスト化:ブロックチェーン上で数秒以内に完了し、仲介業者を経由しない。
- 透明性と信頼性:取引は公開台帳に記録され、監査性が高く、詐欺リスクも低減。
- 金融アクセス拡大:スマホとインターネットさえあれば銀行口座なしでも利用可能。
- スマートコントラクト連携:ゲーム内アイテム取引、トーナメント報酬、自動配分などを中間業者なしで実装可能。
将来展望
- インゲーム資産のトークン化
- スキンや土地、イベントチケットなどをステーブルコインと結びつけることで取引可能に。
- クリエイター経済の拡大
- RobloxやFortniteのような収益分配モデルが、ステーブルコインでさらに透明かつ即時に。
- DeFiとの融合
- トークン化したゲーム内資産を担保に貸付やトレードが可能となり、エンタメと金融の境界が溶けていく。
結論
ステーブルコインは 「クレカの代替」ではなく「新たな基盤インフラ」 として、
- ゲーム産業のコスト削減
- 金融包摂の推進
- クリエイターとプレイヤーの収益拡大
を可能にし、将来的には ゲームと金融を統合する経済圏 を生み出すと論じています。
次に具体的な事例を見ていきましょう。現時点でどんな動きがあるんでしょうか?
ゲーム向けプログラミング可能ステーブルコイン構想
- Playtron(昨年登場したゲーミング向けOS) が M0(ステーブルコインのプラットフォーム) と連携し、Sui ブロックチェーン上でゲーム用ステーブルコイン「Game Dollar」を発表。ゲーム内購入・サブスク・報酬に使う“中立でプログラミング可能な金融レイヤー”を目指す。
- 米国短期国債(トークン化を含む)で裏付けられる設計、ハンドヘルド機 SuiPlay0X1 への統合(初回ロットは完売)。
出典:Playtron / M0 プレスリリース
https://www.m0.org/press-releases/playtron-announces-game-dollar-bringing-programmable-stablecoins-to-gaming?utm_source=chatgpt.com
Snail Games によるステーブルコイン導入への取り組み
- Snail Gamesが自社の USD 建てステーブルコイン導入を検討していると説明し、専用子会社設立など体制整備を進めている。
- パブリッシャーが発行側を検討することで、ステーブルコインが単なる実験領域ではなく商業的ロードマップに上がってきたことを示す。
出典:Snail の公式投資家向けリリース
https://investor.snail.com/news-releases/news-release-details/snail-inc-announces-intent-explore-proprietary-usd-backed?utm_source=chatgpt.com
マイクロトランザクション特化
- ステーブルコイン MNEE が HandCash(Web3 決済ウォレット)に統合され、ゲーム内のチップ/小額購入に実運用レベルで対応(文脈的にアプリ全般)。
- ガストークン不要、手数料1/10セントなど、マイクロトランザクションの現実的解法を提示する。
出典:MNEE・HandCash の統合発表
https://www.mnee.io/news/mnee-stablecoin-now-available-on-handcash-unlocking-instant-transactions-with-no-gas-token-required?utm_source=chatgpt.com
探してみたところ提言は結構出てくるんですが、実際に取り組んでる事例はごく僅かで限定的でした。冒頭で取り上げた事案の渦中にあったValveやitch.ioはあんなことあった後だしどうなのかな?と思ったんですが、とくにこれと言った動きは現時点で見られません。ですがコミュニティレベルでステーブルコイン決済の議論はされてますね。Valveは過去にBTC決済を導入して失敗したり、NFT禁止にしたりと暗号資産に懐疑的になってそうですが、フットワークは軽そうなので普及率次第で導入の可能性はあると予想します。
いちゲーマー目線で言うと、普及の契機となるのはゲーム内での導入だと思います。それも堅固なプレイヤー主導型経済圏を抱える強力なオンラインゲームで。P2Pの取引に使えるようになったら爆発的に拡大しそうです。ステーブルコインの導入をしようとしまいと、そういった強力な新タイトルが今後登場するのか?という疑問はありますが。やはりRobloxや人口が多いMMOといった活発な既存ビッグタイトルが有力候補でしょうか。
そういえば書いてて思い出しましたが、ブロックチェーンゲーム界隈ではテスト中のEVE Frontierがブロックチェーン要素を統合するなど注目を集めており、私もちょっと気になってるところです。ステーブルコインの話題からは脱線しますがこれ凄いですよ。自律型スマートコントラクトに支えられた完全自律経済をユーザー達に委ねる状態まで持っていくのを理想に掲げてるんですよ。実現されたらオンラインゲームが次の段階へ突入するんじゃないでしょうか?
なんやかんや書きましたが、ここまで挙げてきた取り組みは、まだ萌芽段階にあると言えます。現時点でゲーム業界が導入を進めるか、どれほどのプレイヤーが利用に踏み切るかは定かではありません。しかし、上記のようにステーブルコインに多くの課題解決力と創造の可能性が秘められていると私は感じます。
これは夢想ですが、もし今後ゲームが単なる遊び場から発展し、一種の仮想社会として機能するようになった時、プレイヤーはその中で経済や文化を築き、資産を育て、コミュニティと価値を共有するようになるでしょう。そのときステーブルコインないし何らかの通用力を持つ暗号資産は、そうした活動を支えるインフラとして土台の役割を果たすかもしれませんね。
もしそんなビジョンに近づいたなら、ゲーム体験は消費から共創へと大きく姿を変えるでしょう。その可能性を想像すると、未来のゲームに対する期待で胸が高鳴ります。