『REANIMAL』レビュー
今年2月にリリースされたホラー・アドベンチャーゲーム『REANIMAL』をプレイさせていただきました。開発スタジオであるTarsier Studiosの過去作『Little Nightmares』との比較を交えつつのレビューです。ネタバレ無し!
※本作をプレイするにあたり株式会社THQ Nordic Japan様よりSteamキーを御提供いただいております。
作品概要
| ジャンル | ホラー・アドベンチャーゲーム |
| プレイ人数 | 1〜2人(ローカル、オンライン) |
| 対応プラットフォーム | Nintendo Switch 2 PlayStation5 Xbox Series X|S Steam |
| 日本語対応 | 字幕・音声あり |
| 開発 | Tarsier Studios |
| パブリッシャ | THQ Nordic |
『REANIMAL』レビュー
| プレイ時間 | 約7時間 |
多くを語らないスタイル
本作『REANIMAL』をプレイするにあたり、同じくTarsier Studiosが手掛けた『Little Nightmares』と『Little Nightmares II』も通しでプレイしました。その上でまず感じたのは、本作がそれらの系譜を極めて色濃く受け継いだ作品であるということです。
不気味で不条理な世界観、多くを語らない演出、そしてシンプルな操作で馴染みやすくも緊張感のあるアクション。そのいずれもが『Little Nightmares』らしさとして本作に継承されています。
その”らしさ”はアートスタイルや操作性といった表層的な部分に留まりません。根っこの部分で通底しているのは「何が起きているのかわからない」という感覚です。なぜ自分は追われるのか、どこへ向かおうとしているのか、そもそもこの世界は何なのか。そうした問いに対して、本作もまたほとんど答えを提示しません。
プレイヤーに与えられるのは状況だけであり、稀にキャラクターがセリフを発するものの(日本語吹き替え!)、多くのシーンでは環境と出来事から物語を推察するしかありません。言い換えれば、この作品には意図的な“空白”が存在しています。そしてプレイヤーは、その空白を自らの想像と解釈で埋めていくことになります。
今回、最初から最後までCo-opでプレイしましたが「これはこういう意味じゃないか?」とか、「これはあのシーンと繋がってる」といった推測を相方と交わしながら進める時間は、極めて濃密なものでした。答えが明示されないからこそ、解釈はプレイヤー同士の曾田に生まれる。そこに本作ならではの面白さがあります。
そして何より、本作にはその期待に応えるだけの手がかりや大いなる秘密が用意されています。多くを語らないゲームだからこそ、誰かと語りながら進める価値がある作品だと感じました。

世界観
本作の世界観を形作る要素として特徴的なのは、動物をモチーフとした異形のクリーチャー、スケールの異なる多様なロケーション、そして戦時下を思わせる情景です。『Little Nightmares』が心理的な恐怖や不安を抽象化した内面の悪夢であったとするなら、『REANIMAL』はより肉肉しい恐怖を描いています。
とりわけ印象的なのが、クリーチャーのデザインです。追跡者として現れる様子がおかしい豚さんや羊さんといった存在は、どこか歪でありながらも、その出自を想像させる形を保っています。それは単なる異形ではなく、「かつて何であったのか」を否応なく意識させる造形です。家畜という、人間に管理、消費される存在。その延長線上にあるようにも見える彼らの姿からは、どこか一方的な搾取や歪んだ関係性の気配すら感じられます。
そして本作の世界に決定的な闇を与えているのが、戦争を思い起こさせる要素です。軍隊、兵器、軍事的なロケーション。明確な説明は一切なされないものの、そこにあるのは明らかに人間の営みが生み出した暴力の痕跡です。私にはまるで、この世界が人類が積み重ねてきた暴力の歴史で構成されているかのように見えました。
『REANIMAL』の世界には、『Little Nightmares』以上に重たい質感があります。単に不気味であるだけでなく、どこか現実と地続きであるようなデザインが本作の世界観の特徴でしょう。
ゲームプレイ
ゲームプレイの基本は『Little Nightmares』と同様にシンプルです。ジャンプ、ダッシュ、ライト、攻撃といった基本操作を組み合わせて進行していく構造に大きな変化はありません。
ただし本作はパズル要素がやや抑えられ、全体としてはアクション寄りのバランスになっています。難しさの中心は、逃走シーンにおける反射神経と、戦闘・ステルスシーンにおける敵の行動パターンの把握にあります。一部ではいわゆる死に覚えゲーに近い場面も見られますが、チェックポイントは細かく配置されており、試行錯誤を前提とした設計になっています。
ゲームの流れは、探索→ステルス→逃走→戦闘といったようなシーケンス方式で進行していきますが、道中の展開はクリーチャーからの逃避がメインとなるのも『Little Nightmares』譲りと言えます。鬼ごっことかくれんぼの構図が、純粋なホラーゲームとしての緊張感を生んでいます。各パートの配分は安定しており、濃密な内容かつ予想がつかない驚きの展開が待っています。おかげで最後までエキサイティングできました。
本作には明確な変化も見られます。その一つがカメラワークです。シーンごとにダイナミックに動くカメラが、空間の構造や状況の切迫感を強調し、演出面での没入感を大きく高めています。非常に素晴らしい仕事をしています。
また、本作ではスケールの大きな屋外エリアが増え、巨大な建造物や広大な景観には圧倒されます。この変化からは、ホラーとは異なる、アドベンチャー感が強くなった印象を受けました。道中に散りばめられた派手な演出からもそれを感じます。
そして、忘れてはならないのが本作の核にあるタッグでのチームプレイについて。本作は最初から最後まで「2人であること」を前提に設計されています。

ソロプレイでは『Little Nightmares 2』のように相棒AIが状況に応じて自律的に行動し、スムーズな補助を行います。しかし本作の本質はCo-opにあります。相棒が”最適解を知る同行者”ではなく、”同じように状況を把握しきれていないもう一人のプレイヤー”になることで、ゲーム体験は大きく変質します。プレイヤー2人でアイデアを出し合い、突破口を探り探り見出していく過程は、まるで五里霧中の主役2人とリンクしているかのようです。可能であればぜひ、信頼できる相手と2人で臨んでほしい。それが本作の体験を最も豊かにする方法です。
一方で気になる点としては、探索導線にやや粗さが見られることが挙げられます。進行は一本道を基本としつつ分岐が設けられ、正規ルートの他に収集物などが配置されているシークレット部屋が用意されています。ところが正規ルートに進んでしまうと後戻りできない場面が多く、探索の自由度は高いとは言えません。結果として、「まず確認してからシークレット探しに戻る」という行動が取りづらく、収集要素を重視する場合には難がある構造になっています。また、これは好みの問題と言えますが、パズル要素が物足りない点。2人であることを活かした、もっと高度なパズルが欲しかったです。
総評
クリアまでおおよそ6、7時間というボリュームは、価格とのバランスで判断が分かれるかもしれません。ただ、プレイ後に残る感触としては「短い」というよりも「密度が高い」という印象が強く残りました。演出、世界観、ビジュアル、テンポ。そのすべてが凝縮されており、体験としての満足度は非常に高いものでした。
過去作との比較においては『Little Nightmares』が築き上げた、不安と緊張に包まれたホラーアクションを維持しながら、確かなスケールアップが図られているのが確認できました。とくに協力プレイ対応は本作の大きな特徴であり、前述の通りパートナーを誘うのオススメしますが、ひとり部屋を暗くしてアトモスフェリックにプレイするのもまた最高の味わい方のはずです。
なお、3章構成の追加コンテンツが予告されており、それらを包括するシーズンパスも販売中です。2026年から2027年にかけて1章ずつ順次リリース予定だそう。そこでは何が描かれるのか?今後も目が離せません!