SF 2Dプラットフォーマー「Orphan」クリア感想 (ネタバレなし)

メトロイドヴァニア スタイルを採用した2Dプラットフォーマー「Orphan」をクリアしたので感想をば。ストーリーに関するネタバレはございません。

❏作品概要

Orphanを制作したのは、テネシー州を拠点とするインディースタジオであるWindy Hill Studio。Brandon Goins氏1人による個人スタジオで、Orphanが処女作となるそうです。本作は2014年から開発が始まり、2015年にはKickstarterで資金調達に成功していました。パブリッシングはソフトウェア開発等を手掛けるサンフランシスコの 2Dimensions が担当しており、こちらも初のパブリッシングだそう。

Orphanはメトロイドヴァニア スタイルを採用した2Dプラットフォーマーで、米国アパラチアの丘陵地帯の山々、洞窟、河川、鉄道、炭鉱、田舎道、機械的な構造体、などのユニークな環境を舞台に、エイリアンの襲撃から生き延びた唯一の生存者(と思われる)である少年を操り、エイリアンのマシーン軍団と戦い、ときにはステルスで道を切り拓いていくことになります。

トレーラーやスクリーンショットで描かれているビジュアルの第一印象は名作インディーズゲーム「LIMBO」にインスパイアされているようにも見受けられますが、ゲーム性はLIMBOとは違い、Orphanでは武器による戦闘、能力アップ、ボス戦などの要素が用意されています。現在日本語には非対応。定価$14.99でGOG.comとSteamで販売中。

Youtube:https://www.youtube.com/watch?v=MXd6QnH_t_0
❏世界観

現代のアメリカ、アパラチア地域が主な舞台となります。主人公である少年(名前はゲーム中に出てこない)の行く手を阻むエイリアンは、進行中に一瞬だけ生身の姿が見える瞬間がありますが、基本的に道中に出現するのは自律式のドローンタイプや搭乗式のメックタイプなどです。エイリアンはレーザー攻撃やバリアを使い、地球文明よりはるかに高度なテクノロジーを有しているのが伺えます。

❏クリア感想

小粒ながらもそこそこのクオリティに仕上がっている印象。ですが、インベントリシステムが足を引っ張っているのと、蛇足のような要素が目立ち佳作未満といったところです。

ボリュームは?

本作はメトロイドヴァニアスタイルと自ら銘打っているだけあってステージのあちこち分岐点があり、奥まで進むと装備アイテムなどを発見出来たりといった探索要素があります。ですが、あくまでもオマケ程度の要素であり、たとえ寄り道に時間を費やしたとしてもクリアまでのタイムはせいぜい10時間前後(リトライ時間含む)だと思います。装備品も数多くは用意されておらず、プレイ中見つけたのは頭、腕、足、胴などの各カテゴリごとに2、3種類ずつしかありませんでした。

ステルスの必要性

スタートしてしばらくは少年は武器を何も持っていないため、敵を避けるためにステルスで進行していくことになるのですが、このステルス要素に不満を覚えました。”隠れ具合”・”物音の大きさ”の2つのステルス用パラメータが用意されているのですが、敵の感度が良すぎるのと、どこに隠れれば完全なステルス状態に移行できるのかがかなり分かりづらいためストレスフル。少しでもステルスにムラがあると速攻で敵にキルされてしまうため、何度もトライ&エラーを重ねました。しかも武器を入手してからはステルスする必要性は一切無く、前述したステルスパラメータまで作っておいてもったいないというかなんというか…。

インベントリの使い勝手の悪さ

インベントリの使い勝手が悪く、なんとも奇妙な仕上がりになっています。このゲームは体力回復アイテム、グレネードなど戦闘中に使いたいアイテムがあっても、クイックスロットというものが無いため、敵とドンパチやっている最中にインベントリを開かなければなりません。インベントリを開いても時間が静止するわけではないのでアクションゲームにとって致命的な仕様になっています。しかもインベントリ内の操作はマウス操作時でも自由にポインタ選択ができず、方向キーで上下左右にしか動かせない上(この動きはコントローラー操作としては違和感は無いが)、カーソルの動きを止めた時点でアイテム選択が決定されインベントリ画面が自動で閉じるという仕様のため誤操作が多く、何がどうなってこんな仕様に落ち着いてしまったのか、というのが率直な感想です。こんなミスマッチなインベントリシステム、私は初めて見ました。

ボス戦の難易度

ボス戦の難易度が高め。道中は雑魚敵との戦闘こそあれど、主にジャンプと移動を繰り返すオーソドックスなアクションしか行いませんが、ボス戦になると突然高レベルなアクションを要求されます。ボスの攻撃、アクションがなかなか激しく、プレイヤーはジャンプ、ローリング回避、バリア防御を駆使し、ボスの行動パターンを読み、弱点目掛けて銃を正確に撃ち込む必要があります。ですが銃の照準操作は移動キー(左スティック)と同じなため、きっちり攻撃を当てるにはその場で立ち止まらなければならず、回避も交えてそれを行うとなるとアクションゲーム中級者~程度のスキルが必要になります。さらに前述した使いづらいインベントリのおかげでボス戦は大混乱必至でリトライ連発でした。ストーリー後半頃にはそんな仕様にもなんとか慣れつつあったものの、ひと通りクリアした今の私のこの作品に対する印象は”ボスとの一進一退の攻防を繰り広げるハードなアクションゲーム”です。プレイする前に抱いていた、ステージのギミックの難易度で語るLIMBOのような作風ではなかったのです。ちなみにボス自体はとてもよく出来ています。攻撃はいずれも強力ですが、パターンと弱点さえ読み切れれば何とかなる、まさにアクションゲームのお手本のようなボス達が登場します。

グラフィック

見た通りずっと暗いですが光が効果的に演出されていて、LIMBOほどの幻想感はないもののとても綺麗です。

❏感想まとめ

カジュアルなアクションゲームをプレイしていると思いきや、ボス戦ではゴリゴリのアクションシューティングゲームと化し、取ってつけたかのようなステルスや成長要素は10時間というプレイ時間の中では効果的に機能しているとは言えず、それぞれの要素がまとまることなくひしめきあっている状態。あれをやりたい、これもやりたい、といろいろくっつけちゃったのかもしれません。ストーリーや演出なんかはよく出来ていたので、それを更に前面に押し出し、余計な要素を排除し、シンプルなゲームプレイであったならもっと好印象だったはず。というかそういう作品だと思ってました。一部地形ハマり箇所のようなところは有りましたが、大きなバグはなく、全体を通して一定のクオリティには到達しており、インディースタジオの処女作としてはよくできている方だと思います。パーツや発想は良いと思うので次回作に期待です。