最近redditを中心に騒がせているのでご存知の方もいらっしゃるかもしれません、「Red Shell騒動」。
様々なビデオゲームで使用されているユーザー情報解析・追跡サービス「Red Shell」が、その特性から一部のゲーマーから反発の声が上がり、ゲーム開発側がゲーム内に組み込んだRed Shellの削除対応に迫られている問題です。
事態は紛糾しており、続々とRed Shellを使用していたゲームタイトルがRed Shellを”スパイウェア”と見なすゲーマー達の手によって明らかにされています。今回はRed Shell騒動の現状を調べてみました。
Red Shellとは
どこかで見たことがあるような赤い甲羅がシンボルマークになっている「Red Shell」。この赤い甲羅、某ゲームではターゲットを追尾する性能を持つ強力な武器としても有名です。その性能になぞらえているのかは定かではありませんが(十中八九そういう事かと思われますが)、今回問題となっているRed Shellもゲーマーを追跡する性能を有しています。一体ゲーマーの何を追跡し、デベロッパーは何が目的でゲームに組み込むのでしょうか。Red Shellの公式サイトでは、
◆ペイドメディア(TV、雑誌、ウェブ広告などの媒体)のパフォーマンスの追跡
◆キャンペーンの投資対効果の計測
◆多数の代理店と広告ネットワークの統合
◆企業レベルのセキュリティとコンプライアンス
が謳われています。これらの事がPCゲーム、コンソールゲームを対象に可能となるようです。
これ以上踏み込んだ説明は実際に使ってみないとできませんが、要はゲーム購入者がどの広告を辿ってきたか、そしてゲームの販促はどの程度の効果があったのか、などの情報がRed Shellの利用者は知ることができるようです。これらの情報が把握できればゲームを作り、そして販売する上でのアプローチが有利になります。闇雲にプロモーションする必要がなく、効果的な場所で効果的な広告を掲載し、ドンピシャなターゲット層に売り込むことが可能になるのです。
このようなゲーム購入者の情報がRed Shellを介してデベロッパ側に渡る仕組みの詳細について、「Holy Potatoes! We’re in Space?!」のSteam内総合掲示板で開発元Daylight Studiosが説明しています。
Red Shellは我々が投稿したリンク(FacebookやYoutubeなど)を介して誰かがゲームを購入した場合のみ追跡し、既に所持しているプレイヤーには影響を及ぼさない。我々が理解している仕組みは次の通り。
①誰かがFacebookのリンクをクリックし我々のSteamページに移動する。リンクをクリックした時あなたのコンピュータにあなたのIPに対する一方向ハッシュの識別IDと共にCookieが保存される。これは解読されないことを意味する。
②ゲーム購入者はそれをプレイすることになる。ゲームを最初にスタートしたときに再度IDが生成され、ブラウザに保存されたCookieと比較される。
③IDが一致すると誰かがリンクを介してゲームを購入したことをRed Shellが認知する。それはキャンペーンデータに追加されるただの数値であり、プレイヤーの行動に関する個人情報は一切ない。
そしてその後Daylight Studiosは、Red ShellはGoogleアナリティクスのような分析ツールであるとし、デベロッパ、ユーザー双方の有用性を説いていますが、結果としてユーザーの反発の声に押されアップデートによりRed Shellの削除を行っています。
反発の理由
上記のことを踏まえるとたしかにRed Shellは有用です。デベロッパーの方々も生活がかかっているでしょうし業績が伸びるのであれば利用しない手はないのかもしれません。しかし、ユーザーのコンピューターに影響を及ぼし、情報が知られるという事実が反発を招いているのも事実です。
とくに今回の騒動が発展した背景には今年5月に施行された「GDPR」の存在があります。様々なウェブサイトやニュースに取り上げられたり、Googleからのメールなどで認知されている方も多いかと思います。EU(欧州連合)における個人情報保護の規則であり、施行による変化を簡潔にまとめてしまうと、欧州経済領域の個人データの保護が強化され、罰則と執行力も強化されました。個人データを取り扱う側は事業規模の大きさに関わらず適正な管理と説明責任が求められます。詳細についてはWikipediaをご覧ください。
Red ShellはGDPRへの適用のため個人情報に当たるIPは上記で述べた通り一方向ハッシュによる暗号化し匿名化させる仕組みを用いて対処しているとしています。
ここでひとつの懸念が生じます。Red Shellが収集するプレイヤーデータはIPに紐づけされた足跡だけなのでしょうか。Red Shell APIドキュメントを覗くと使用OS、スクリーンの解像度、使用言語、タイムゾーン、インストールされているブラウザ、フォントなどのテキストが確認できます。私は法律の専門家ではないのでこれらを個人情報と捉えるべきかどうかは判断できませんが、Wikipediaによると個人データは個人に関するあらゆるものが対象となると欧州委員会では定められているようです。
ユーザーの情報がゲームのマーケティングに役立てられるためにデベロッパ側に渡るこれらの仕組み、ユーザー側は承諾した上で自分の情報を明け渡していますでしょうか?中には情報収集の旨が記載されるEULA(使用許諾契約)を用意している会社も存在しますが、そんなものが組み込まれているとは気づかずにゲームをプレイしている方も多いはずです。法に反するかどうかはさておき、ゲームを遊びたくて買っただけなのに信頼するしない以前の知りもしない会社のソフトウェアが自分の意志とは関係なくコンピューターを介して情報を他人に渡しているという事実。このRed Shellの気味悪さ(まったく気にならない方もいるとは思います)が敏感なゲーマー達に”スパイウェア”という烙印を押させ、Red Shellの使用を隠し続けてきたかのような開発側の態度が反発を招いているわけです。
今後Red Shellは活動内容をオープンにし、組み込んだゲームは購入前に情報収集されることが明確にわかるようにするなどの対策がないと事態が収束に向かうのは難しいかもしれません。しかしそのようなことを公表してしまえば敬遠するゲーマーが出てくるのは必至。それが予想できてしまうので前面的な公表が行われないのでしょう。しかしながらその問題がクリアできなければいつまでも”スパイウェア”呼ばわりされてしまうことは避けられないのかもしれません。
Red Shell使用が確認されたタイトル
Red Shellに反発するゲーマーたちは次々とRed Shellを使用しているゲームを挙げていき、ゲームの開発側が反発の声に押され続々とRed Shellを削除する更新を行うか、または将来的な削除の約束をしたりといった様子が現状となっています。この騒動に真摯に向き合ったデベロッパーはRed Shellをどのように活用していたかなどを事細かに報告する対応を見せています。
redditには削除済み、もしくは削除の約束済みタイトルのリストと、コミュニティの報告により判明したまだRed Shellを使用しているタイトルのリストがあり、リスト内容は日々更新されています。リスト投稿者様の御許可をいただけましたので参考までに6月20日付の最新リストを掲載します。
削除済み・削除を約束したタイトル
- Elder Scrolls Online (削除済み)
- Conan Exiles (削除済み)
- Ylands (削除済み)
- Holy Potatoes!We’re in Space?! (削除済み)
- Total War シリーズ (削除を約束)
- Warhammer:VermintideⅡ (削除を約束)
- My Time At Portia (削除済み)
- Dead by Daylight (削除済み)
- Battlerite (削除を約束)
- AER Memories of Old (削除を約束)
- Magic the Gathering Arena(closed beta) (削除済み)
- Secret World Legends (削除を約束)
- Hunt:Showdown (削除を約束)
- Escapists2 (削除を約束)
- Omensight (削除を約束)
- Ballistic Overkill (削除を約束)
- Vaporum (削除済み)
- Tales from Candlekeep:Tomb of Annihilation (削除済み)
- Yoku’s Island Express (削除済み)
- Clone Drone in the Danger Zone (削除済み)
コミュニティの報告で判明したRed Shellを使用し続けているタイトル
- Civilization Ⅵ
- Kerbal Space Program
- Gurdians of Ember
- The Onion Knights
- Realm Grinder
- Heroine Anthem Zero
- Warhammer 40k Eternal Crusade
- Krosmage
- Eternal Card Game
- Sniper Ghost Warrior 3
- Astro Boy:Edge of Time
- Cabals:Card Blitz
- City Battle | Virtual Earth
- Desolate
- Doodle God
- Doodle God Blitz
- Doodle God: Genesis Secrets
- Dungeon Rushers
- Labyrinth
- My Free Farm 2
- NosTale
- RockShot
- Shadowverse
- SOS & SOS Classis
- SoulWorker
- Stonies
- War Robots
- Survived By
- Injustice 2
- The Wild Eight
- Raging Justice
- Warriors: Rise to Glory!
- Trailmakers
- Robothorium
- League of Pirates
- Archangel: Hellfire
- Skyworld
リストアップされるタイトルは今後も増え続けるかと思われます。今後の動向を見守りつつ事態が進展した際には再び取り上げてみようと思いますが、願わくば消費者が納得する形で良い方向に進んでいくのが好ましいように思います。
参考、情報元 Red Shell, reddit, CSO
ゲームはオフラインでしかやらない自分に死角はなかった!
・・・「やらない」ではなく「やれない」が正しいと言う問題は置いておいて
いや、やろうと思えばできるんですけんどね。ギガを湯水のように使う財力があれば・・・
山の中さんお越しいただきありがとうございます。
オフラインという名の聖域、まさに死角なしです。